2015 Fiscal Year Annual Research Report
非極性面上窒化アルミニウムガリウム系半導体結晶の高品質化と物性制御
Project/Area Number |
14J02639
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 修平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 半極性 / AlGaN / 誘導放出 / 光ポンピング / 偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
AlGaN系半導体は深紫外発光デバイス用材料として期待され、研究がすすめられている。これまでにAlGaN層を活性層に用いたレーザーダイオードの報告はなされているものの、波長300 nmよりも短波長領域で発振するレーザーダイオードは実現されていないのが現状である。これは、従来のレーザー構造が、極性面である(0001)面上に成長され、量子井戸内に生じる強い内部電界の影響を受けることが原因の一つとして考えられる。内部電界を抑制する手法として半極性面上への成長が提案されているが、その結晶成長の困難さから良質な結晶が得られず、これまでに半極性AlGaN量子井戸からの誘導放出の報告はなされていない実情にあった。一方で、本研究ではこれまでに、成長条件の最適化およびAlN基板の利用によって、高品質な半極性AlGaN/AlN量子井戸の作製に成功している。そこで、面内偏光度の制御を軸として誘導放出に向けた半極性面量子井戸の構造設計を行い、光ポンピングによる誘導放出を目指して研究を行った。 半極性(1-102)AlGaN/AlN量子井戸(井戸幅: 1.5 nm)において、面内偏光度のAl組成依存性を調査したところ、Al組成を20%以上に保つことで劈開面からの光取り出しが可能になることが分かった。そこで、波長250 nm付近での誘導放出を目指し、Al組成50%の(1-102)AlGaN/AlN量子井戸構造を作製して光ポンピング測定を行った。この際、劈開により試料端面にa面を出し共振面とした。 ArFエキシマレーザ(波長: 193 nm)を励起光源として低温下で光ポンピング測定を行ったところ、強励起条件下では誘導放出が明瞭に観測された。誘導放出時において、線幅のnarrowingが顕著にみられ、発光強度の増大から閾値励起密度は500 kW/cm2程度であることが見積もられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半極性面AlGaN/AlN量子井戸において、Al組成や井戸幅を適切に設計することで面内偏光度を制御し、劈開面からの強い光取り出しを可能にした。実際に、半極性(1-102)AlGaN/AlN量子井戸において劈開により共振面を作製し、光ポンピング測定にて誘導放出を観測した。AlGaN系半極性面量子井戸からの誘導放出の観測は初めてであり、研究は順調に進行しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
半極性面AlGaN/AlN量子井戸からの誘導放出を確認したものの、その閾値励起密度は十分に低いものでなく、半極性面量子井戸の潜在能力を活かしきれていない結果であるといえる。この要因の一つとして、これまでに作製した試料では、ミラーロスの影響を強く受けている可能性があると考えている。 今後は、半極性面量子井戸の劈開面に酸化物系(HfO2/SiO2)の誘電体多層膜ミラーを作製し、誘導放出のさらなる低閾値化を目指す。また、VSL(Variable stripe length)法等により、さらに詳細な光学特性の評価も行う予定である。
|
Research Products
(13 results)