2014 Fiscal Year Annual Research Report
平安朝の宴遊における序と漢詩・和歌の表現について-『本朝文粋』収録作品を中心に-
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14J02682
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 真由子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 和歌序 / 詩序 / 和漢比較文学 / 和漢朗詠集 / 源氏物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.各時代・作者の「序」の特徴および「序」の影響の考察―和歌序の初期の様相と、その物語文学への影響を明らかにすることを目的として、大江千里の和歌序の表現の特徴と『源氏物語』における受容の可能性を検討した。2013年9月の口頭発表に基づき考察を進め、その成果を「大江千里の和歌序と源氏物語胡蝶巻―初期和歌序の様相と物語文学への影響―」(『国語国文』83巻6号、京都大学文学部国語学国文学研究室、2014年6月)にまとめた。 2.詞華集と関わる作品の注釈―詞華集に収載された作品について、「序」の如何なる点が評価されて摘句されているかを考察し、作品の解釈を示した。2012年11月に口頭発表した内容に補訂を加え、大幅に改めて「北陸豈に亦た詩の国ならんや―源順を送別する宴の詩序と詩歌―」(『和漢比較文学』53号、和漢比較文学会、2014年8月)として発表した。 3.同一の宴遊における作品収集と文事の実態解明―口頭発表「平安朝の宴集の和歌序の表現について」(京都大学国文学会、2014年12月6日)では、同一の宴遊において作られた二篇の和歌序および和歌を収集し、序の表現の成り立ち、特質を調べて、二篇の関係と宴遊の実態とを解明することを試みた。この研究は、『本朝文粋』に収録された「序」と同じ宴遊で作られた漢詩・和歌を収集し、詠作年時・場所・主宰者などの情報を整理するという当初の計画を発展させ、1.と同じく和歌序に注目した考察である。『本朝小序集』という、漢文体の和歌序を中心に集成した資料に収められる作品を取り上げた。 4.課程博士論文『平安朝の宴集における序と詩歌』の提出―平安朝において詠作された「序」と「詩歌」の表現について、その成り立ち、特質を明らかにすることを目的として、『古今和歌集』の成立した頃から『源氏物語』の書かれるに至るまでの時期、および詩序と和歌序とが伝存する源順を中心に論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である、平安朝の宴遊で詠作された「序」と「漢詩・和歌」の表現について、その成り立ち、特質を明らかにし、宴遊の実態に即した「序」と「漢詩・和歌」の解釈を示すという点においては、着実な進展が見られる。 具体的には、詞華集『和漢朗詠集』に収載された「序」の一節について、どのような部立に、如何なる点が評価され摘句されているかを検討し、解釈を示した。また、同一の宴遊において作られた二篇の和歌序および和歌を収集し、序の表現の成り立ち、特質を調べて、二篇の関係と宴遊の実態とを解明するという試みを進めている。さらに、和歌序の表現の特徴や、その物語文学への影響を明らかにした。 ただし、和歌序に重点を置いて研究を進めたため、『本朝文粋』に収録された「序」についての成果が乏しい。同書に関する注釈書、研究史の整理も今後の課題として残っている。引き続き、多くの作品の解釈を積み重ねて、それらの作品の表現を歴史的な展開および同時代の他のジャンルの作品との関わりの中で捉えていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は『本朝文粋』に収められた「序」について研究を進める。特に、平安初期から中期の「序」の表現について考察し、同期の特徴を明らかにしたい。また、各作者の特徴を、師弟間における創作方法の継承や、同一の主題の表現方法の相違などの点から考察する。多くの作品を読み解く中から、「序」の文体や様式の特徴について整理し、より解釈に有効な形式の抽出を試みたい。また、儀式書・公家日記などの資料を利用して、「序」や「漢詩・和歌」の表現と披講方法との関わりを考えたい。 同時に、和歌序については、口頭発表「平安朝の宴集の和歌序の表現について」を論文としてまとめ、さらに考察を進展させたい。 また、奈良時代から平安時代にかけての「序」の受容、制作開始から隆盛そして衰微に至る歴史的展開を検討する。「序」制作の背景にある文化史・文学史の流れ、また他のジャンルの文学作品や中国文学における序の歴史との関わりをふまえて考察を進めてゆきたい。
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Research Products
(3 results)