2014 Fiscal Year Annual Research Report
未利用資源からの高効率ブタノール生産を目指した学際的研究の実現と推進
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14J02694
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野口 拓也 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ブタノール / 遺伝子発現解析 / カーボンカタボライト抑制(CCR) / ヒスチジン含有リン酸転移タンパク質 / メタボローム解析 / ペントースリン酸経路(PPP) |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物発酵プロセスにおいて、グルコースの存在によってキシロースといった他の糖の消費が抑制される事象をカーボンカタボライト抑制(CCR)と呼ぶ。我々はこれまでの研究でセロビオース/キシロース混合糖がCCRを回避したブタノール発酵を可能にすることを明らかにした。したがって当該年度は【CCR回避時の糖輸送および代謝メカニズムの解明と高効率キシロース代謝株創出】を目的として研究を行った。 まず、CCR、非CCR条件間で発現量が異なる遺伝子を探索するためにRT-PCRを行った。その結果、ヒスチジン含有リン酸転移タンパク質(HPr)キナーゼ(HPrK)をコードする遺伝子(hprK)の発現量に顕著な差が見られた。そこで、hprKと以前の酵素活性測定試験でCCR、非CCR条件間で3倍活性に差が見られたキシロースイソメラーゼ遺伝子(xylA)について、Real time RT-PCRによる定量解析を行った。実験の結果、非CCR条件下のhprK発現量はCCR条件と比較して45%低下していることが明らかとなった。一方、xylAは10%程度発現量が増加していた。HPrKはCCR機構において中心的な役割を果たす酵素であり、したがってセロビオース/キシロース混合糖利用時のCCR回避はhprK発現量の低下が主な要因であることが示唆された。 次に、CCR、非CCR時の細胞内中間代謝物の動態を明らかにするために、メタボローム解析を行った。CCR条件下の代謝物量を1として比較した結果、キシロース代謝を担うペントースリン酸経路(PPP)の代謝物量は条件間で顕著な差は見られなかった。これはPPPが可逆反応であり、解糖系の中間代謝物と共役しているためであると考えられる。したがって、CCR条件下ではキシロース輸送および上流経路(キシロース→キシルロース→PPP)に律速段階が存在するということが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子解析とメタボローム解析によって使用菌株Clostridium saccharoperbutylacetonicum N1-4(N1-4)のCCR回避メカニズムおよびCCR発生時の律速段階に関する知見が得られた。その一方で、本菌株は遺伝子操作が比較的難しく、代謝解析によって得られた知見を基にした分子育種がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
hprK、xylA以外の糖輸送および代謝遺伝子について更なる解析を行う。特にxylA同様キシロースイソメラーゼ活性を有すると思われる推定タンパクをコードする遺伝子(CSPA_RS20990、CSPA_RS23080、CSPA_RS22800)について検討を行う。また、育種菌株の創出は遺伝子操作が比較的容易且つN1-4株と同様の発酵挙動を示すことが明らかとなっているC. acetobutylicum ATCC 824を使用菌株として研究を行う。さらに、本研究結果を応用した稲わらからの効率的なブタノール生産を実現させるために、低グルコース/高セロビオース加水分解物の生成を目的とした前処理・加水分解法の開発を行う。
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Research Products
(4 results)