2014 Fiscal Year Annual Research Report
2脚ロボットを用いたヒト左右分離型トレッドミル歩行における適応機序の構成論的理解
Project/Area Number |
14J02718
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤木 聡一朗 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 歩行 / ヒト / 左右分離型トレッドミル / ロボット / 小脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
左右分離型トレッドミルは左右の脚に対して異なる速度でベルトを動かすことで左右非対称な歩行環境を作り出し,これによって歩行における適応機能を調べることができる.ヒトの左右分離型トレッドミル歩行では,特徴的な即時的な適応と緩やか適応の2つのタイムスケールの異なる適応が見られることが知られており,特に緩やか適応には小脳の寄与が先行研究により示唆されている.このヒトの左右分離型トレッドミル歩行における適応メカニズムの理解に向けて,本研究では生理学的知見に基づく神経制御モデルの提案を行い,構成論的観点からこれを実装した2脚ロボットを用いた歩行実験による検証を行った. 本年度は,小脳が大きく寄与しているとされている身体感覚情報の予測と現実との誤差情報に基づいた運動指令の調整機能に着目し,左右分離型トレッドミルが作り出す左右ベルト間の速度差によって乱された歩行中の左右脚の接地タイミングに対して,その接地タイミングの設計値と実際の値との誤差に関する評価関数を構築し,その評価関数に基づいて左右の脚運動のリズムを変更する機能をロボットの制御系に導入した.ロボットによる歩行実験を行った結果,デューティー比や,左右脚の相対位相,及び,床反力の圧力中心軌跡などの歩行の特徴量にヒトの即時的な適応と緩やか適応と同様の傾向が見受けられた.特に今回提案した誤差情報に基づく運動のリズム調整によって,ロボットに緩やか適応が生じていることが確認された.この結果から,本提案モデルがヒトに内在する制御構造を説明することができると示唆される. 以上のロボット実験に加え,この小脳の機能の生物学的な妥当性を調べるために,ラットを用いた左右分離型トレッドミルの歩行実験にも着手し始めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は小脳の感覚誤差情報に基づく運動指令の調整機能に着想を得た制御機構を提案し,2脚ロボットの動力学シミュレーションと実機実験による歩行実験を行った.その結果,ロボットの歩行にヒトの左右分離型トレッドミルと同様の適応の傾向が現れることが確認され,当初の計画通りに研究が遂行されている. 更に,この小脳の機能の生物学的な妥当性を調べるために,ラットを用いた左右分離型トレッドミルの歩行実験にも着手し,運動計測から妥当な結果が出始めているなど,当初予定していたものよりも格段の進展が見られている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,ラットを用いた左右分離型トレッドミル歩行実験を中心に,脚のキネマティクスデータだけでなく,脚主要筋の筋電図の取得と解析を行う予定である.更に,疾患(神経疾患等)モデルラットに同様の歩行実験を課すことで,疾患の運動機能への影響を調べていく予定である. また計測データを基に,ラットの神経筋骨格モデルの動力学シミュレーションを用いた構成論的研究を行うことで,数理的な面からも適応的歩行における神経系の機能的役割の理解を進める予定である.
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Research Products
(4 results)