2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J02723
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森崎 一宏 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 不斉四置換炭素 / ケチミン / 不斉アルキニル化 / アミノ酸誘導体 / ロジウム触媒 / 酸化的カップリング / N-H イミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以前発表したロジウム触媒によるケチミノエステルに対する直接的触媒的不斉アルキニル化反応の①反応機構解析②反応機構解析によって得られた知見に基づく新規触媒の開発ついて検討を行った。その結果、詳細な反応機構の解明及び、触媒量の低減に成功した。また、共同研究者との研究により基質一般性の拡大にも成功しており、現在論文投稿準備中である。 ①系中で生成していると考えられたRh/Pheboxアセチリド錯体を別途合成し、触媒量用いて反応を行ったところ、これまで触媒として用いていたジアセテート錯体1を用いた際と比較して、10倍以上の反応時間の短縮が観測された。種々の速度論解析・当量反応を行った結果、系中で徐々に生成していたRh/Pheboxアセチリド錯体が本反応の活性種である事が明らかとなった。以上より、アセチリド錯体を迅速に形成可能な前駆体を反応に用いることで反応性の向上が予想された。また、速いサイクルにおける速度論的なプロファイル、量子化学計算を用いた遷移状態の構造も明らかにし、触媒反応メカニズムについて知見を得る事ができた。 ②私はTMSアセチレンとの反応で得られたアセチリド錯体が、種々のアルキンと反応し対応するアセチリド錯体を迅速に生成する事を見出した。そこで、本錯体を触媒に用い反応を行ったところ、最大1/5の触媒量でも同等の反応性が得られる事を見出し触媒量の低減に成功した。また共同研究者との研究により、種々のTMSアセチレン由来錯体を合成し反応に用いる事で、より反応性の低いケチミンに対する反応を達成し、高収率・高エナンチオ選択的に不斉四置換炭素含有スルタムやアミノホスホン酸類を合成する事に成功した。 さらに、イミニウムイオンを用いた求核付加反応に関しても研究を開始しており、系中発生させたイミニウムイオンに対し求核剤が付加し得る事を示す結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り一年目の段階においてケチミンに対するアルキニル化反応の基質一般性の拡大に成功する事ができた(論文投稿準備中)。また、イミニウムイオンを用いた反応に関しても、本反応を進行させるために重要な知見を得る事ができた。 以前報告したロジウム触媒によるアルキニル化反応について、触媒活性種の単離・速度論解析・等量反応等を行う事で触媒反応機構を解明する事ができた。また、触媒活性種の形成に時間を要することが本反応の反応性を低下させる要因の一つであることを見出した。さらに、触媒活性種の形成が可能な新規触媒を設計・合成する事で当初一年目で行う予定であったケチミンの基質一般性の拡大を、官能基共存性を失う事なく達成した。また、量子化学計算を用いることで遷移状態の構造についての情報も得られており、より高活性な反応系の開発につながるものと考えている。 また、ケチミンに対する求核付加反応が有する種々の問題を克服するために、イミニウムイオンを用いた反応の検討もすでに開始している。検討の結果、生成物の分解により目的物を得るには至っていないものの、系中発生させたイミニウムイオンもしくはイミンに対し反応が進行することを示す結果を得る事ができた。これらの結果から、目的の反応を進行させ目的物を得るためには、生成物が酸化条件及び酸性条件で安定である必要がある事が分かった。これらの知見から、求核剤や基質となるアミンの選択が本反応には重要であり、まずは単離した窒素上無置換イミニウムイオンもしくは対応するイミンを用いて反応が進行する条件及び生成物の安定性を評価する必要があるという指針を立てる事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は①窒素上無保護のイミニウムイオンに対する立体選択的な求核付加反応に有効な触媒系の探索②イミニウムイオンをアミンから定量的に合成する方法の確立をそれぞれ行う。その後、得られた知見を基に上記反応を組み合わせ、目的とする「系中で発生させたイミニウムイオンに対する立体選択的求核付加反応」の達成を目指す。 ①昨年までの検討で、イミニウムイオンを求電子剤として用いた反応では生成物の安定性が低い場合がある事が分かった。また、生成したイミニウムイオンは速やかに求核剤と反応する必要があるため、イミニウムイオンもしくは対応する窒素上無置換イミンへの求核付加反応に有効な反応系が必要であるが、そのような反応例は非常に限られている。そこで、既存法を基に別途イミニウムイオンもしくは対応する窒素上無置換イミンを調整・単離し、立体選択的求核付加反応に有効な触媒系の探索を行う。具体的には比較的高い求核性を有するインドールやニトロメタン、TMSCNなどを用い、イミンの活性化が可能なブレンステッド酸やルイス酸触媒を検討する。また、同時に本反応の生成物のである無保護アミンの安定性や単離法についても知見を得る。 ②上記の検討と並行して、自己縮合を抑え一級アミンから酸化によってイミニウムイオンが生成可能な条件の検討を行う。これまでの報告から、酸化反応条件において高い求核性を有する一級アミンと生成したイミニウムイオンやイミンが共存するために自己縮合が進行すると考えられる。そこで私は、基質として一級アミンの塩を用いる事で未反応のアミンの求核性を下げ縮合反応を防ぐ方法、フロー系を用いる事でアミンと生成したイミニウムイオンやイミンが共存しない条件で酸化反応を行う方法の検討を行う。 これら独立した検討から得られた知見を元に、目標である系中で発生させたイミニウムイオンに対する立体選択的求核付加反応の達成を目指す。
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Research Products
(5 results)