2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J02725
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北澤 直宏 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | ベトナム / 宗教 / 政教関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究は、ベトナム共和国(南ベトナム:1955-1975)における政教関係を、新宗教カオダイ教団の変遷を通し考察するものである。ベトナム共和国はアメリカの支持を受けて誕生し、1975年に社会主義を掲げるベトナム民主共和国(北ベトナム)に敗れ崩壊した国家として知られている。しかし、この南北ベトナムの間に起きた戦争に関しては、多くの報道や回顧録が存在する一方、イデオロギーを巡る言説が先行したのも事実であり、実証的な研究が行われては来たとは言い難い。本研究は、これまで用いられてこなかった「南」側の一次資料を用いることで、上記の問題を克服するものである。 もっとも、本研究の目的は、共和国側の公定史観を提示することではない。そこで着目するのが、当時の共和国内で独自の政治・軍事力を有していた、新宗教カオダイ教である。共和国が誕生してから崩壊するまでの20年間、政府・教団の関係はいかに変化したのか。両者の政治的思惑を明らかにすることで、より客観的な事実関係の提示と考察を行い、ベトナム地域研究および宗教研究に貢献したい。具体的には以下の通り。 1.ベトナム地域研究:共和国政府による性急かつ強引な改革の数々は、国民から多くの反発を招いたが、その目的が近代化にあった点も否めない。では、この過程において西洋近代的な「宗教」概念がいかに導入され、受け入れられたのか。政府・教団双方の内部資料を用いて考察する。 2.宗教研究:政治的な安定さを欠き、頻繁にクーデターが起きていた共和国において、政教関係も変化していた事は想像に難くない。では、教団による対外活動(政治活動・社会活動)はどのように変化したのか。これを明らかにすることで、ベトナムにおける宗教のあり方について考察したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に行った研究は、ベトナム地域研究に関わる部分が多く、その成果の一部は発表する機会にも恵まれた。特に進展を見せたのは1950-1960年のベトナム史に関する研究であり、これは査読論文としての掲載が決定している。また、その執筆過程では当時の一次資料に接する機会が多かったため、新しい知見を得ることも多かった。これらは、解説や短報という形で印刷・出版されている。加えて、今日の宗教事情までも含めた「ベトナム宗教概説」を執筆する機会にも恵まれ、これも書籍の1章として出版されることとなった。 フィールドワークに関しては、2014年8月と2015年3月の2回、ベトナムの宗教施設を訪問し調査を行っている。自らの研究を補完するものだけでなく、新たな人脈の構築や新資料の発見など、今後の研究に繋がる部分も多く有意義であった。 しかし当初の計画とは異なり、2本の投稿論文執筆には至っていない。早急に仕上げていくつもりである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2015年6月には、研究テーマの1つである宗教研究について、学会での発表が決まっている。ここでは、半世紀に及ぶ教団の慈善活動を分析することで、その活動の変化と政治的背景について述べたいと思っている。また、それを発展させ9月までには論文の執筆・投稿を行う。 その後は、博士論文の執筆に専念するつもりである。可能であればフィールドワークを行いたいと考えているため、早急に宗教に関する投稿論文を終わらせたい。
|
Research Products
(3 results)