2015 Fiscal Year Annual Research Report
AdS/CFT対応を用いた超弦理論のダイナミクスの解析
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14J02735
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沼澤 宙朗 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | AdS/CFT対応 / 共形場理論 / 境界状態 / エンタングルメント / 量子情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
AdS/CFT対応はAdS時空上の超弦理論と、その境界上で定義された共形場理論(CFT)の間の双対性であるが、特にCFT側から時空が創発する機構を調べることは重要な問題である。近年、CFT側のMERAと呼ばれる実空間繰り込みを用いて、量子エンタングルメントの構造からAdS時空を構築する試みが成されている。また、MERAの考えかたを推し進めると、Surfece/State対応というAdS/CFT対応ないしゲージ/重力対応の一般化に行き着く。そこで、我々は実際にMERAがSurface/State対応を実現するかを調べる研究を行った。この研究において、AdS時空中の局所演算子の挿入をMERAの文脈で表すことに成功した。この結果は以前に知られていた結果を再現し、また境界状態としての新たな解釈を得ることができた。 エンタングルメント・エントロピーはAdS側の余次元2の曲面の面積に対応し、CFTによる時空の構築に役立つ量子情報理論的な物理量であるが、より次元の高い曲面に対応する量子情報理論的な物理量を求めることは興味深い。そこで、我々は余次元1の曲面に対応する物理量を探し、それが量子情報計量に対応することを突き止めた。特に、ブラックホール時空においては、この余次元1の曲面はブラックホールの中を探ることができ、ブラックホールの生成過程を捉えることにも役立つ量であることが分かった。 また、ブラックホールの生成などと関連して、CFTの励起状態の研究を行うことは興味深い問題である。そこで、我々は自由フェルミオンの系において、局所演算子の作用による励起状態のエンタングルメント・エントロピーの時間発展を調べた。フェルミオンの場合にはスピンと伝搬方向に相関があることに起因して、短調増加しない例を得ることができた。これはスピン1/2の粒子に特有の現象であり大変興味深い結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、MERAがSurface/State対応の例をどのように与えているかを調べた。特に、AdS中に局所演算子を挿入した状態は、CFT側ではある種の境界状態として解釈できることがわかった。また、エンタングルメント・エントロピーは余次元2の曲面と双対な物理量である。これに対し、本研究では余次元1の曲面と双対なCFT側の量は量子情報計量であることを発見した。特に、この量を使ってブラックホールの内部を探ることができる。これらの成果を得たことから、当初の計画以上に進展があると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
AdS側の局所演算子の解析は、現在のところCFT側の中心電荷が無限大の極限をとった場合の表式である。この中心電荷が有限の場合、時空の側の時空の局所性の破れが現れるはずであるから、その機構を調べる。 また、量子情報計量の時間発展を調べたが、これまでの研究ではCFTの詳細に因らない部分を見た。そこで、次はCFTの詳細による部分を調べることにする。さらに、中心電荷が有限の場合を考えることで、ブラックホールの蒸発に対応する現象が見られるかを調べる。
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Research Products
(12 results)