2014 Fiscal Year Annual Research Report
多原子分子ラジカルの超高分解能レーザー分光計測と分子内相互作用の解明
Project/Area Number |
14J02791
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
多田 康平 神戸大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 高分解能分光 / 硝酸ラジカル / 状態間相互作用 / 磁場効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
単色性の良い波長可変レーザー光とドップラーフリー分光法を併用し、電子遷移を回転線まで分離して観測すれば、分子の電子励起状態において、分子の幾何構造に関するstaticな情報と、分子内相互作用ひいては化学反応に関するdynamicな情報の両方が得られる。 本研究では多原子分子ラジカルに注目し、具体的な系として当該年度には硝酸ラジカル(14NO3)およびその窒素同位体種(15NO3)の可視吸収帯について高分解能レーザー分光研究を遂行した。 14NO3については、15100 cm-1付近に存在するB←X遷移0-0バンドと帰属されている振電バンドを回転線まで分離して観測することに成功した。観測された高分解能蛍光励起スペクトルは非常に複雑な回転構造であり、これはB電子励起状態が他の振電状態と強く相互作用していることを示している。スペクトルの確実な帰属を行うために、自作した電磁石を用いて回転線のゼーマン分裂を観測した。ゼーマン分裂の詳細な解析により一部の回転線の帰属に成功した。解析の結果、観測領域の複雑な回転構造は、B電子状態とA電子状態の間の振電的な相互作用によるものだと結論付けた。現在は、B電子状態の振動励起状態への遷移に対応する16000 cm-1付近の振電バンドについて高分解能分光計測とその解析を進めている。 15NO3についても、15100 cm-1付近に存在するB←X遷移0-0バンドの高分解能蛍光励起スペクトルを観測した。14NO3と同様にB状態は他の振電状態と相互作用しているものの、14NO3ほどは回転構造は複雑でなかったため、スペクトルの解析を行うことができ、励起状態の分子定数を決定することに成功した。これは15NO3の電子遷移を高分解能で観測・解析することに成功した最初の研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硝酸ラジカル(NO3)の14N、15N同位体種について、当初計画していたものに近いペースで高分解能分光計測が進んでおり、分光計測と並行して解析も進んでいる。これらの研究成果は、国内および国際学会にて報告するとともに、2報の学術論文として当該年度に印刷公表されており、業績としても問題ない。以上のことより、本研究課題は現在のところおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
硝酸ラジカル(NO3)については、14NO3の16000 cm-1付近に存在する振電バンドの高分解能分光計測を引き続き行う。NO3は16000 cm-1付近から光分解することが知られており、この領域を高分解能で観測することで前期解離等のダイナミクスについて詳細な議論を展開したい。状態間相互作用によってスペクトルがさらに複雑化すると予想されるため、前年度と同様にゼーマン効果を利用することに加えて、状態選別によりスペクトルを単純化する光・光二重共鳴分光法をNO3に適用し、高分解能スペクトルの確実な解析に努める。 NO3に加えて、状態間相互作用が大きいといわれている二酸化窒素(NO2)についても高分解能分光研究を遂行する。14NO2について、13700-16800 cm-1に存在する振電バンドを超微細構造線まで分離して蛍光励起スペクトルを観測する。超微細構造線の解析により励起振電状態におけるフェルミ接触相互作用定数を決定し、これを基に、電子基底状態と電子励起状態の間の定量的かつ包括的な相互作用の解明を試みる。
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Research Products
(8 results)