2014 Fiscal Year Annual Research Report
現代インドにおけるダリトのキリスト教改宗-変動する社会と宗教実践-
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14J02832
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 麻美 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 南アジア / インド / 改宗 / 聖霊運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドにおけるダリト(いわゆる「不可触民」)を対象として、1990年代の集団改宗および近年の聖霊運動の台頭に着目し、ダリトの独立教会で広く観察される文化解釈や文化の受容の変遷を通じてダリトの宗教実践を明らかにすることを目的としている。具体的な調査地としては、インド南部タミルナードゥ州農村社会を取り上げる。 平成26年度における研究作業の焦点は、本研究の中核となる現地調査の実施であった。現地調査では、以下を主たる調査内容として実施した。調査対象集団のヒンドゥー教およびキリスト教における宗教実践理解、ミクロヒストリー作成に向けた口述資料の収集、加えて、社会経済状態の把握を目的とした6村全328世帯の世帯調査である。 世帯調査からは、1980年代以降、ダリトを含めた農村社会全体において上方への社会経済的動態が考察された。参与観察および聞き取り調査からは、ヒンドゥー教からキリスト教への改宗を経た後もダリト独自の宗教実践がキリスト教宗教実践の文脈の中に解釈を変容させつつ移植され、一種の連続性が垣間見れることができた。以上の調査結果から、農村社会において聖霊運動が強い求心を得ていることとの関連を指摘できると考えている。ライフヒストリーの聞き取り調査からは、集団改宗発生のメカニズムをインド全土・州の社会政治経済的事象と農村社会との歴史的な交錯の中で理解するという試論に達した。 平成26年度は、以上の現地調査の成果を投稿論文として投稿することはかなわなかったが、本年度は研究成果発表を研究作業の中心として位置づけ、積極的に研究を遂行していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、研究の中核となる現地調査を実施し、当該年度中の投稿論文作成まではかなわなかったものの、研究対象となる社会集団の社会経済的現状の把握、儀礼的宗教実践の記録、ライフヒストリーの収集、地域の宣教史の口頭資料収集といった研究上の骨子となる部分を抑えることができた。研究課題の達成度はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、研究の中核となる現地調査の実施を平成27年度に、その予備調査の遂行を平成26年度に予定していた。だが、昨年26年度に研究作業の柱となる現地調査を実施し、定めた目的をある程度達成することができたため、本年度は成果の発表に尽力する。投稿論文作成過程において様々な知見を獲得し、今後の研究の糧としていきたい。
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