2014 Fiscal Year Annual Research Report
有機ケイ素化合物還元剤を利用した低原子価前周期遷移金属錯体の新規反応の開発
Project/Area Number |
14J02837
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西山 悠 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 前周期遷移金属 / 有機ケイ素還元剤 / 小分子活性化 / 還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
前周期遷移金属の低原子価種はその反応性の高さから、小分子活性化反応などに用いられてきた。しかしながら、従来の合成法では、亜鉛金属やナトリウム金属の水銀アマルガムなどといった強力な金属還元剤が必須であった。一方、当研究所では、有機ケイ素化合物が前周期遷移金属の還元剤となることを見出しており、環境調和性に優れているだけでなく副生成物の除去も容易という利点を有している。そこで、私は、有機ケイ素還元剤を用いた前周期遷移金属を触媒とした反応開発に取り組むこととした。 まず、有機ケイ素還元剤を用いてトリメトキシタンタルジクロライドの還元反応を行ったところ、還元反応は進行しているものの複雑な化合物を与え単離することは困難であった。続いて、有機ケイ素還元剤を用いて、イミド錯体の還元反応を行ったところ、1電子還元が進行し、塩素架橋のニオブ (IV) 二核錯体を単離することに成功した。続いてこの錯体を用いて窒素間に二重結合を有するベンゾシンノリンの活性化を検討したところ、窒素間の二重結合を活性化に成功した。 また、前周期遷移金属の低原子価種の反応性を制御することを企図して、酸化還元活性な配位子を有する前周期遷移金属錯体の合成を行った。まず、酸化還元活性な α-ジイミン配位子を有するニオブ及びタンタル錯体の合成を行った。これらの錯体は各種 NMR 測定及び X線結晶解析等で同定を行っており、配位子が中性からジアニオン性へと変化していることを確認している。続いて、これらの錯体が炭素―塩素結合をラジカル的に切断することを見出した。この反応では、配位子上の電子が基質に移動することで基質が還元されている。さらに、この反応性を利用した触媒反応の検討を行った。その結果、ニオブ錯体はラジカル付加反応に、タンタル錯体は脱ハロゲン化水素化反応にそれぞれ高活性を示すことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、前周期遷移金属の低原子価種の合成に成功し、またそれを利用した小分子活性化に成功した。また、酸化加減活性化な配位子を導入した錯体がラジカル反応の触媒反応の発見は当初の研究計画の予定外であったものの、興味深い研究成果として学術雑誌に掲載することができ、新たな研究テーマとしての発展も期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
小分子活性化の課題に関しては、当初の目的である二酸化炭素や窒素を活性化するにはより強い還元力を有する前周期遷移金属の低原子価種が必要であると考えられる。そこで、今後は、より還元力の強い還元剤の合成に着手することにする。 また、酸化還元活性な配位子を有する前周期遷移金属錯体を触媒としたラジカル反応に関しては、詳細な反応機構解明を行うために、中間体の合成や速度論解析等を行っていく予定である。
|
Research Products
(7 results)