2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J02855
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大野 林太郎 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 単葉函数 / 係数評価 / 凹函数 / 幾何学的函数論 / 函数の特徴付け |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究員は,単位円外で単葉な,クラスΣを構成している複素有理型函数の係数評価を課題に平成26年4月よりDC2(当時)として研究を行っている.従来の単位円内におけるクラスSを構成している単葉函数の係数評価に関するBieberbach予想の証明を目的として確立された手法を取り扱った文献を調べ,これらの単位円外部への応用を模索した. そこで、定義領域を単位円の外部から内部に移すことが可能である点に着目した.単位円内に定義領域を移した場合,同じ係数を持ちながら原点に極が与えられた複素有理型函数として取り扱うことが可能である.さらに,Mobius変換を行う事で,その極の位置を原点から移動させ,元となる函数と同じ領域を像とするものの,単位円内の任意の点を極とする単葉函数を構成できた. さらに,クラスΣの特殊例である凹函数に上記の考察を応用し,新たな特徴付けを行った.今までは極を原点以外に持つ凹函数,つまり,クラスΣに属している函数とは違った係数領域を持つ凹函数に対してのみ評価が与えられていたが,この新たな特徴付けにより,直接的にクラスΣの特殊例となっている,原点に極を持つ凹函数の1次と2次の係数に対して不等式が導き出せた.これらの結果は論文にまとめて学会誌に投稿し,発表された. また,平成26年度,国内外の様々な集会で発表をする機会が与えられた.9月には函数論サマーセミナーで凹函数に関する必要十分条件やに上記で得られた新たな特徴付けに関して講演を行い参加者からコメントをいただいた.11月には東工大複素解析セミナーにて今まで知られている凹函数の結果を含め,新たなに得られた係数評価について発表を行った.12月にはインドで開かれた幾何学的函数論の国際会議で講演し,多国の研究者と交流を持てた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題に取り組む過程で,まず従来の単位円の内部におけるクラスSを構成している単葉函数の係数評価に関するBieberbach予想の証明を目的として確立されたSchifferの変分法やLoewner方程式,Milin予想などを取り扱った文献を調べ,これらの手法の単位円外部への応用を模索した.そして,過去の考察をたどる過程で,具体的な係数評価を与えるためには得られる条件式の自由度が多すぎることが大きな問題として浮かび上がった.この点に対しては,上記で記載した単位円の内部で極の位置を移動させ,新たなパラメータを導入することによりクラスΣに属する函数の係数評価に向けて進展が得られた. 一般的な単位円外部の単葉函数の係数評価は引き続き取り組んでいる課題ではあるが,同時に研究対象となっている,そのクラスΣの特殊例である凹函数に対してはこれまでになかった特徴付けと不等式が得られ,その応用で凹函数の係数評価を与えることが出来た.また,これらの結果を論文にまとめ,学術誌に投稿,発表することが出来た.同時にこの新たに証明された手法は特殊例である凹函数だけでなく,一般のクラスΣに属する函数のケースにも応用が可能であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
単葉函数の分野で確立されている従来の手法を直接単位円外部の函数に当て嵌めることは自由度などの問題から難しいため,極の位置の移動によって得られた手法をクラスΣに属する函数の特徴付けと係数評価に応用していく予定である.その際,まずは4次の係数に注目し,Schoberによって立てられた予想の是非を確認する.また,5次以上の一般係数との関連性も考察し,一般的な係数評価の予想を立て,可能である範囲で証明を行う.同時にクラスΣの特殊例である凹函数の研究も引き続き行い,新たに導入した手法を改良し,より一般的な結果を求める. さらに,対象となっている複素有理型函数を極の部分と正則函数の部分に分けて扱うことによって,それらの函数の根本的な特徴付けと係数の評価が得られると考えられる.現段階ではこの手法の素案しかないが,特殊例である凹函数に対する大まかな計算では既に有望な結果が得られている.今後は一般的なクラスΣに属する函数に対して考察を行っていき,その係数評価に繋がる結果が導き出せると考える.
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Research Products
(6 results)