2016 Fiscal Year Annual Research Report
低炭素マルテンサイト鋼の低温脆性とマルテンサイト微視組織の関係
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14J02863
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坪井 瑞記 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 低温脆性 / へき開破壊 / 破壊力学 / 結晶学 / マルテンサイト / ベイナイト |
Outline of Annual Research Achievements |
鋼のマルテンサイト・ベイナイトは高強度を示すが,低温で靭性が大きく低下し,脆性的に破壊することが知られている.我々はマルテンサイト鋼の低温脆性破壊挙動を調べ,従来報告されていたブロックやパケットではなく,同じBain格子変形によって生成するバリアントの集合(Bain unit)がマルテンサイトの低温靭性を支配する組織単位であることを明らかにしている.また,異なるBain unitサイズを有するベイナイト組織の延性-脆性遷移温度を調べ,Bain unitサイズの微細化に伴い延性-脆性遷移温度は低温側に移行,すなわち低温脆性が抑制されたことを報告している.本年度は,Bain unitの微細化により低温脆性が抑制された要因を,クラック進展開始抵抗およびクラック伝播抵抗の観点から検討した.引張試験時の荷重-変位曲線からJ積分値を測定するとともに,破面トポグラフィ解析によりクラック成長量を精密測定することで,J抵抗曲線を正確に作成・解析しし,Bain unitの微細化によってクラック進展開始抵抗とクラック伝播抵抗がともに向上することを明らかにした.さらに,有限要素法解析により算出したマイクロクラック近傍の引張応力から,破壊クラックがBain unit間の境界を越えて進展開始するための局所的な破壊靭性値を評価し,局所的な破壊靭性値の最大値はBain unitサイズによらず同程度の値であることを見出した.これらの結果から,Bain unitサイズが微細である場合,破壊初期に生じるマイクロクラック長さが短いためにマイクロクラック先端における応力集中の度合いが低くなる結果,Bain unitの微細化によってクラック進展開始抵抗が向上すると考察している.また実験的に得られた局所的な破壊靭性値は,理想脆性体を仮定したGriffith 理論から予測される値よりも非常に大きいことから,Bain unitの微細化によるクラック進展開始時およびクラック伝播時の塑性緩和量の増加も,低温脆性の抑制に寄与していることを明らかにした.
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Research Progress Status |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(6 results)