2014 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ中枢ニューロンの性決定に果たす細胞間相互作用の役割の解明
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14J02877
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 貴大 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 性差 / transformer / fruitless / GAL4/UAS / MARCM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエ中枢ニューロンの神経突起の形態的な性差の形成におけるニューロンを取り巻く「性環境」の果たす役割に着目して解析を進める。MARCM法によりtransformer (tra)の機能を選択的に雌の少数の脳細胞で喪失させることにより、その細胞だけを雄に性転換させた。それらの細胞をGFP標識し、抗GFP抗体とneuropile特異抗体を用いた二重蛍光染色をした後、共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析した。一部のニューロン集団を雄化した際にそれに呼応して mcALa 及び mAL ニューロンに雄特有の突起が形成されるかどうかということに重点をおいて網羅的に解析を進めた。その結果、mcALa ニューロンが同時に雄化された際に不完全な形態ではあるものの雄特異的な神経突起を形成する少なくとも3つのfruitless(fru) 発現ニューロン群を同定した。また、mAL ニューロンについても、左右脳半球の mAL ニューロンが同時に雄化した場合、片側のみが雄化された場合と比べ、神経投射がより雄の様式に近づくことを明らかにした。 これらの結果を受けて、相互作用するニューロン群の一方のみを雄化し、他方のニューロン群の投射パターンへの影響を検証するために、GAL4/UAS システムとは別の遺伝子強制発現系を用いたモザイク法を新規に確立した。この新規モザイク法を用いて脳内の一部のニューロン群をRFPで選択的に標識したところ、各脳に1~3つのニューロン群が形成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の研究においては、mcALa ニューロンの雄特異的な神経突起の形成を誘導している可能性のある fru 発現ニューロン集団を数種同定できた。しかし、当初予定していた周囲の脳細胞はそのままに、雌に性転換した状態にあたる、fruの機能を喪失した細胞クローンを雄の脳内にモザイク法によって作出する実験が、実験に用いる系統バエに不具合が生じたことにより思うように進めることができなかった。この実験は、本研究の重要な課題でもある、ショウジョウバエ中枢ニューロンの神経突起の形態的な性差の形成におけるニューロンを取り巻く「性環境」の果たす役割を解明する上で重要な実験であるので、優先的に進めていかなければならない。 GAL4/UAS システムとは別の強制遺伝子発現系を用いたモザイク法を新規に確立することができたので、相互作用するニューロン群の一方のみを雄化し、他方のニューロン群の投射パターンへの影響を検証することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の研究により、mcALa ニューロンの雄特異的な神経突起の形成を誘導している可能性のあるニューロン群が一部特定されてきているので、今後の方針として、新規のモザイク法を用いてこれらのニューロンが雄化した際に mcALa ニューロンの形態に与える影響を解析していく。また、雄化された異なるニューロン群を異なる色で標識するために、これまでの手法にBrainbow を取り入れ、「作用する側」と「作用される側」のニューロンを明確に区別して形態を計測する。 また、一連の相互作用する相手となる脳細胞を解明する実験と同時に、突起形成における細胞間相互作用を担う分子機構を解明するための実験を実施する。ショウジョウバエにおいては、シグナル分子やそれらのレセプターに関与する遺伝子は同定されており、その突然変異やRNAi発現により機能阻害が可能である。モザイク法とは異なる狙ったニューロン群のみを操作することのできる発現部位限定法を用いて同定されたシグナル分子やレセプターの機能阻害を引き起こし、mcALa ニューロンの雄特異的な神経突起の形成に対する影響を検証していく。
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Research Products
(2 results)