2014 Fiscal Year Annual Research Report
フェオダリア類の多様性とプランクトン群集における役割の解明
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14J02889
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仲村 康秀 北海道大学, 水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | Phaeodaria / Cercozoa / Single-cell PCR / plankton / silica flux / CNRS / France |
Outline of Annual Research Achievements |
フェオダリア類 (動物プランクトン) に関する研究を進める第一歩として、過去の知見をまとめた総説を執筆した。この論文はSpringer 社から出版予定の原生生物学の教科書『Marine Protists』の一章として既に受理されている。また、和文の総説も『日本プランクトン学会報』へ投稿しこちらは現在査読改訂中である。フェオダリア類の多様性を解明する為に、北半球にて広範囲なプランクトン採集を実施し、フェオダリア類の全ての目に属する標本を入手する事に成功した。18S rDNA分析により、このグループ全体がケルコゾア類に属する単系統群である事、既存の分類体系と系統樹の樹形とに大きな齟齬がある事が判明し、これらの新知見を国際学術誌Protistに投稿した。現在査読改訂中である。前述の広範囲な採集に加え、日本海北部でも約3ヵ月毎のプランクトン採集を行い、バイオマスの季節変化をモニタリングした。その結果、フェオダリア類の一種Aulographis japonicaの分布が日本海固有水中に限られている事、および彼らが年間を通じてカイアシ類に次ぐ高いバイオマスを維持している事が明らかとなった。この調査の過程でフェオダリア類の未記載種Auloscena sp.を発見した。この種はバイオマスが低いものの、A. japonicaと同様に日本海固有水中にのみ分布している可能性が高く、日本海固有の生態系を考える上で重要な種となる可能性がある。これらの日本海における知見についても、現在2編の投稿論文を執筆中である。以上の研究成果に関して4つの国内学会と1つの国際学会にて口頭発表を行い、このうち第47回日本原生生物学会大会ではベストプレゼンテーション賞を受賞した。また、日本プランクトン学会監修の『ずかん プランクトン』をフランス語へ翻訳し、出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度には次に挙げる4つの項目を進める予定であった。すなわち、①プランクトン試料の採集、②フェオダリア類の遺伝子分析、③フェオダリア類の分布と生態の解明および④安定同位体を用いた日本近海における動物プランクトン生態系の比較である。このうち①は既に完了しており、②に関しても分析・論文投稿が済んでいる。③の解析も完了しており、現在論文を執筆中である。④については分析の1/3程度が終わっている。調査の過程でフェオダリア類の未記載種を発見し、日本海における深海生態系の特殊性について興味深い考察ができそうであるため、この成果の公表を先に進めている。そのため、④が当初の予定よりやや遅れているような印象を受けるが、このペースで研究を進めれば翌年度中には成果を公表できると思われる。②-④の研究成果は主に次年度に発表する予定であったが、これらの成果の大部分は初年度中に学術会議等で発表しており、当初の予定よりも早いペースで進んでいる。また、初年度はアウトリーチ活動へも力を入れ、小中学生向けのプランクトン図鑑をフランス語へ翻訳・出版するなど、当初の予定以外の成果も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に予定していた①-④の項目の内、③についての論文執筆と④の安定同位体分析を進める予定である。また、当初の計画には含まれていなかったが、フェオダリア類の未記載種についても解析を進めるつもりである。③については解析が既に完了している為、既に投稿論文の執筆を始めており、2015年度前期中に学術雑誌へ投稿する事を目指している。④に関しては、フェオダリア類を含めた動物プランクトンの安定同位体分析を引き続き進めてゆき、前期中には解析を完了させ後期に論文を執筆・投稿する事が目標である。日本海から得られたフェオダリア類の未記載種に対しては、分類学的・生態学的解析を行い、記載論文を執筆する予定である。この論文中では日本海における深海生態系の特殊性についても考察したい。以上の成果は関連する国内外の学術会議などで随時公表してゆく予定である。また、これまでの研究で得られた成果をまとめて博士論文を執筆する事も、2015年度の大きな目標の一つである。
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Remarks |
本研究員が翻訳しロスコフ生物研究所のFabrice Not氏と協力して出版した『Le Plancton : apprendre et comprendre en images』について、仏ニュースサイトLe Telegrammeに取り上げられた。本研究員の名前Yasumide Nakamura(Yasuhide Nakamuraの誤記)とNot氏の写真も掲載されている。
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Research Products
(7 results)