2014 Fiscal Year Annual Research Report
インド洋海域における生態環境の変容と資源利用-ザンジバル諸島の住宅建築に着目して
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14J02907
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
角田 さら麻 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 建築様式 / 建材 / 生態資源 / 環境政策 / 土地利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は東アフリカ、タンザニアのザンジバル諸島における生態資源の利用と管理の変化を、一般住宅の建築様式ならびに建材の利用形態をとおして明らかにすることを目的としている。平成26年度は、ザンジバル諸島のペンバ島の農村において、建築様式・建材・生態資源・住民の自然観などに関するデータを収集したとともに、土地保有、建材と生態環境、環境政策の3点を中心に調べた。 1)現地調査は、ペンバ島北西部に位置するウェテ州G地区(人口約3,000人)でおこなった。その中から地区の中心にある3村の全家屋151軒について、村の構造や住居を含めた生活環境の全体像を把握した。これらと、土地の利用形態や土地保有などの実態の情報をもとに、村の地図を作成した。集落の構造を空間的に捉えつつ、各家屋の建設プロセスを時間的に把握することで、集落全体の動態を生態と社会の変遷に照らしながら捉えることができるようになった。 2)建築材料のなかでも、とくに重要なマングローブ・チョウジ・アブラヤシ・貝類について、その分布域、建材利用に関する住民の知識や技術に関する情報を収集した。G地区に現存する天然資源のなかで、マングローブ林は古くから貴重な建築資材として島の内外で取引されてきたが、環境保全の潮流は、調査地でも活発化している。マングローブ林の再生は、ペンバ島民の貴重な食料であり、また建材(石灰)の原料となる貝の生産にも強く影響する。 3)ザンジバル政府の公的機関から、マングローブやサンゴ石など、自然環境に関わる法令や事例を調べて、ペンバ島の農村部が受ける社会的外圧についてまとめた。環境政策は、居住様式の変遷を考える上で、自然資源に依存する住民の暮らしに直接影響する重要な要素だと考えている。 2015年3月には、タンザニアにてセミナーを開催し、在留邦人にペンバ島農村部における居住形態の実態について報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、長期のフィールド調査をとおして、本研究の重要な項目である、集落全体の動態を生態と社会の変遷に照らしながら捉えることができるようになった。この基礎データのほかに、集落内の個別の事例(家屋の建設過程、建設事情など)の収集につとめた。調査地は、近年、道路工事などのインフラ整備や環境保全を主とした保全活動によって、かつてない社会的な変革期にある。これら社会的外圧が、家屋の建設にどのような影響をおよぼそうとしているのかを検討することができた。 本研究の目的である、ザンジバル諸島を発祥とするスワヒリ文化の動態を理解するためには、集落の構造を空間的に捉え、集落全体の動態を生態と社会の変遷に照らしながら捉えることが重要である。集落の構造は、これまで調査した土地の利用形態や土地保有を、前述した集落内の家屋の情報を地図上に積み上げていった。これらは、今後さらなる分析・考察をおこなっていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はこれまで、ザンジバル諸島における生態資源の利用と管理の変化を、一般住宅の建築様式ならびに建材の利用形態をとおして明らかにするために、調査地域内の家屋の建設状況、建材の入手状況、社会的な外圧の要因などを多角的に網羅してきた。家屋に関連する視覚的な事項を調査したことで、集落全体の動態を生態と社会の変遷に照らしながら分析・考察をすすめてきた。今後は、調査対象を全体からミクロへと焦点を移しながら、家屋の住人ごとに、ライフストーリーの聞き取りをおこない、地域の生態と社会の変遷をとらえていく。また、これまで収集してきたザンジバル政府発行の過去の公的文書の分析をすすめ、地域におよぶ社会的外圧を、今後予測される生態環境の変容の考察にもちいる。今年度末に提出する予定の博士論文の執筆を進めるとともに、必要が生じた場合は調査地へ渡航し、補完的調査をおこなう。
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Research Products
(1 results)