2014 Fiscal Year Annual Research Report
外場に応答してイオン伝導能をON-OFFする配位高分子の開発
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14J02981
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
CHEN Wenqian 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 配位高分子 / プロトン伝導 / ガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な金属イオンと架橋性配位子の組み合わせを検討し、主にプロトン伝導体の合成を行った。また本課題の目標である外部刺激によるイオン伝導挙動の応答を念頭におき、光を外部刺激として用いることのできる材料・構造の開発を行った。 合成スクリーニングを行った中、Cd2+イオン、1,2,4-トリアゾール、H3PO4からなる[Cd(1,2,4-triazole)2(H2PO4)2]の組成を有する配位高分子の合成に成功した。この配位高分子は二次元レイヤー構造を形成し、そのレイヤー上の水素結合を介してプロトン伝導特性を示す。その値は 1x10-6 S cm-1 (150℃)であった。この結晶状態の試料に対し、ボールミル処理を行うことによって、ガラス化の実験を行った。その結果得られた試料の粉末X線回折はブロードなハローのみ観察され、非晶質化していた。このサンプルのイオン伝導度測定を行ったところ、結晶状態と比較し二桁ほど高いプロトン伝導度を有することがわかった。この非晶質状態において示差走査熱量測定を行ったところ、80℃においてガラス転移点を、さらに150℃において結晶化が起こることを確認した。 次に目的である光応答性への展開を行った。本化合物の粉末ペレットにおいて4 GPaの圧力を四方から均等に印加することにより、ペレット全体が透明であるバルクガラスを得た。このバルク透明ガラスのプロトン伝導特性は150℃において7.4x10-6 S cm-1であり、これら特性より光を材料全体に透過させることができ、かつ比較的高いプロトン伝導特性を有する配位高分子ガラスを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固体におけるイオン伝導はバルク現象であり、その現象に対し、外部刺激によってスイッチするためには、光照射が最も効果的な手法である。しかし結晶性イオン伝導体は光透過特性が(単結晶出ない限り)低く、目的の実現は困難である。ガラスは光透過性があり本研究目的に合致するが、一般的なガラスではイオン伝導特性と光応答性を両方付与することは構造設計の観点から難しい。本研究成果は無機ー有機複合系を用いることにより、プロトン伝導特性とバルク材料としての光透過性を実現したものであり、目的の実現に大きく近づいた。以上の理由から順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果により、イオン伝導特性(特にプロトン)とバルク材料としての光透過性を配位高分子のガラス化によって実現できたため、次年度ではこれら化合物系において(1)光透過性、および光照射による構造変化の観察(2)光照射下におけるイオン伝導挙動のin-situ解析装置の立ち上げと測定、の二点に集中し、進める。この過程でプロトン伝導特性と光照射に相関が見られない場合、より大きな構造変化を有する配位高分子の合成に立ち戻り、特に有機部位に光応答性を示す配位子を設計し、金属イオンと組み合わせることによって大きな応答性を有するイオン伝導体の合成を行う。
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Research Products
(5 results)