2015 Fiscal Year Annual Research Report
位相幾何学のグラフ理論への応用とホモトピー理論への組み合わせ的アプローチ
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14J03035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤内 翔太 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | オーソスキーム複体 / CAT(0) |
Outline of Annual Research Achievements |
高さ有限かつ階層的な半順序集合 P を考える。オーソスキームとは直角三角形を一般化したユークリッド単体であり、これを用いて P の順序複体に距離を定めたものがオーソスキーム複体である。このとき、オーソスキーム複体は測地的な距離空間となることが知られている。CAT(0) 性はリーマン多様体における断面曲率の非正性を測地的距離空間に一般化した概念である。測地的距離空間 X が CAT(0) であるとは、概念的にいえば X に測地線で描かれた三角形がユークリッド平面に線分で描かれた同じ辺の長さの三角形と比べて広くないこととして定義される。 本年度はモジュラー半束のオーソスキーム複体の CAT(0) 性を示すことを目指して研究を行った。そのためにまずブール束の半束への一般化としてブール半束という概念を新たに導入し、旗複体から得られる piecewise spherical complex の CAT(1) 性を用いて、ブール半束のオーソスキーム複体が CAT(0) 距離空間となることを示した。さらにメディアン半束が半束としてブール半束に埋め込めることを示し、この埋め込みがオーソスキーム複体に誘導する写像が、凸部分集合への等長埋め込みとなることを示した。この2つ定理の帰結としてメディアン半束のオーソスキーム複体が CAT(0) 距離空間となることの別証が得られる。Chalopin らは、分配束のオーソスキーム複体がブール束のオーソスキーム複体の凸部分集合へ自然に等長埋め込みできることを用いてモジュラー束のオーソスキーム複体の CAT(0) 性を示したので、上の結果はモジュラー半束のオーソスキーム複体の CAT(0) 性を示す上で非常に有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オーソスキーム複体の CAT(0) 性に関する研究において、メディアン半束のブーリアン半束への埋め込みに関して一定の結果を得られたが、本来の目標であるモジュラー半束のオーソスキーム複体の CAT(0) の証明にはいたらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によりモジュラー半束のオーソスキーム複体の CAT(0) 性を示す準備はある程度整ったと考えられるので、まずはその証明を完成させる。その後は、結果のさらなる拡張と他領域、特に幾何学的群論への応用を目指す。
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Research Products
(2 results)