2014 Fiscal Year Annual Research Report
計算機シミュレーションによるチャネルロドプシンの構造と機能の解析
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14J03041
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邉 宙志 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | オプトジェネティクス / 光受容タンパク質 / ロドプシン / 分子シミュレーション / QM/MM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光駆動型陽イオンチャネル膜タンパク質ChRの基底状態の構造の精製、および反応中間体の構造と機能を、計算機シミュレーションを用いて解析し、そのイオンチャネル機能のメカニズムを解明することを目的とする。2014年度は、以下の2点を計画した。1.様々なChR変異体の基底状態の構造精製と解析、2.溶媒効果を正確に再現する計算手法の開発 1.ドイツの2つの実験グループと共同で行った。実験グループから提供された情報をもとに、ChRの90番目のグルタミン酸をリシン、およびアルギニン置き換えた2つの変異体を作成し、3D-RISM計算によりイオン親和性の計算を実行した。その結果、2つの変異体において、タンパク質内部の陽イオンの親和性が低下し、代わりに陰イオンの親和性が増加していることを示す結果を得られた。これは、これら2つの変異体が陰イオンチャネルとして機能するという実験的な結果をサポートするものである。これら一連の変異による人工的な光駆動陰イオンチャネルは、国際雑誌Scienceにて発表された。 2.研究員がドイツのカールスルーエ工科大学理論研究グループを訪問して、彼らの協力のもと遂行した。具体的には、分子動力学計算ソフトGROMACSへの量子力学的(QM)計算法手法SCC-DFTBの実装した後、研究員が提唱しているQM手法の対象領域の再定義法を組み込んだ。その後、開発した手法を簡単な系(水)に応用し、その実用性の評価も行なった。この手法により溶媒をQMで扱いながら動力学計算を行なうことが可能になり、水和効果を初めて量子力学的精度で取り込むことに成功した。一連の結果は、国際雑誌J. Chem. Theor. Comput.にて報告され、一連の手順、および開発された手法はSize-Consistent Multipartitioning (SCMP) 法と命名した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、本研究の最終目的である”ChRの導電状態の構造モデリングとその機能の解析“を行なうために必要な計算手法の開発と、タンパク質の参照構造の作成を目標としていた。それらが、達成され2本の論文として発表されていることから研究は現在まで順調に進行していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に作成した新しい計算手法は、前述のように水を含むタンパク質の構造精製のために作成されたが、非常に汎用性が高いことが判明した。具体的には、溶媒構造の決定の他に、赤外分光スペクトル計算、溶媒和自由エネルギ-、自己拡散係数計算にも応用でき、溶媒効果を非常に高精度で扱える可能性がある。したがって、次年度は、当初予定していたChRの吸収波長計算の遂行と同時に、手法の応用可能性も探ることを予定している。
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Research Products
(8 results)