2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物疫病菌の交配ホルモンα1、α2のケミカルバイオロジー
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14J03069
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
戸村 友彦 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 疫病菌 / Phytophthora / 交配ホルモン / 生合成 / 有性生殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
疫病菌有性生殖に関するケミカルバイオロジーの一環として、当該年度はα2(A2交配型がフィトールから生合成しA1交配型に有性生殖を誘導する)の生合成酵素の探索を行い以下の成果を得た。 1.α2産生条件の検討 V8野菜ジュース液体培地中で疫病菌のA2交配型を培養するとα2が産生されるが、生合成前駆体のフィトールを添加するとはるかに多くのα2を産生する。そこでフィトールを含む種々のV8ジュース濃度の液体培地中でP. nicotianae(A2)を培養し、α2産生量をLC-MSで確認した。意外なことに、ミリQ水を培地として用いた場合もα2がV8ジュース培地以上に産生された。そこで、ミリQ水を用いてα2産生量の1週間の経時変化を確認したところ、α2は培養2日後に増加し、5日後に減少することが明らかとなった。このことから、α2合成酵素が3日目まで高い活性を保持し4日目以降消失するという重要な知見を得ることができた。 2.菌体抽出物を用いるα2産生アッセイ α2は前駆体であるフィトールの2ヶ所が水酸化された構造を持つ。この水酸化には水酸化酵素(P450)が関与していると考えられるため、液体培養後の菌体からタンパク質を抽出し、フィトールを加えてα2産生アッセイを行った(100 mM Tris-HCl、0.5 mM NADPH、pH 7.5)。アッセイ後の反応物中のα2をLC-MSで測定したが、現在のところα2の産生は確認できていない。 3.フィトールの水酸化機構の解析 α2産生アッセイの結果より、フィトールが1ヶ所のみ水酸化されて反応が停止している可能性があると考えた。そこで、まずミリQ水培養物中のフィトールモノ水酸化物の存在をLC-MSで確認したところ、2種類のモノ水酸化物が観測された。従って、フィトールの水酸化は1ヶ所ずつ2段階で起こる可能性がはじめて判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
α2の生合成酵素の探索を行うにあたり、菌体内で生合成酵素が最も発現されているタイミングを予想するために、α2ホルモンの生産条件の検討を行った。その結果、生産が安定する培地として極めて単純なミリQ水を用いることを見出した。しかし、肝心の生合成酵素のin vitroアッセイ系の確立には至っておらず、生合成酵素の同定にはさらなる時間を要するため。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 交配ホルモンα1、α2の生合成 今後は、α2産生アッセイのため、P. nicotianae (A2) からのα2生合成酵素を含むタンパク抽出物の取得法の確立と生合成酵素の同定に努める。当初の研究計画では、分子生物学的手法で生合成酵素の探索を行う予定であったが、生化学的手法で実際にα2生合成酵素そのものを取得する。まず生きた菌体で産生アッセイを行う。α2が検出されれば、破砕した菌体、凍結乾燥した菌体、抽出したタンパク質と順にアッセイを行っていき、最終的に菌体内のどの組織に生合成酵素が存在するかを掴む。アッセイ系の確立後、活性を追いながら分離・精製し生合成酵素本体を同定する。また、P. nicotianae (A2)はα2を産生する交配型であるが実際はα2からα1に変換する能力を有するため、α2生合成酵素取得後はα1生合成酵素の同定も試みる予定である。 2. 交配ホルモンα1、α2受容体の探索 α1の蛍光プローブ、磁気ビーズ標識プローブおよび光親和性プローブ(共同研究者が合成)を用いて受容体探索を試みたが、受容体の同定には至らなかった。この理由として、プローブのサイズが交配ホルモンの2~3倍であり、非特異的吸着が強くなったこと、受容体の発現量が極めて低いことなどが考えられる。したがってα2受容体の探索に切り替え、同時に蛍光標識ではなく放射性同位体で放射ラベルし、分子の形を損なうことなく受容体を探索する予定である。
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Research Products
(4 results)