2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J03125
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 民雄 東京大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ホロノミック勾配法 / 象限確率 / Fisher-Bingham積分 / 特殊直交群上のFisher積分 / 多面体領域の正規確率 |
Outline of Annual Research Achievements |
多変量正規分布に従う確率ベクトルの各成分の値が正となる確率を象限確率と呼び、その数値計算は統計の応用において重要とされている。竹村彰通教授との議論を下にし、象限確率の数値計算にホロノミック勾配法(HGM)を適用するするために必要な理論的な考察とHGMの計算機への実装、計算実験を行った。 象限確率の研究で得られた理論的な結果を大幅に拡張し、多面体領域の正規確率に関して理論的な結果を与えた。具体的には、多変量正規分布に従う確率ベクトルが多面体領域に落ちる確率を、多面体を決定する不等式系の係数の関数とみなした時、その関数が満たすholonomic系とPfaffian系の明示的な表示を与えた。 HGMの初期値計算の工夫と、Fisher-Bingham積分とその微分のラプラス近似を元にした常微分方程式系の改良により、従来では、次元が7以下の場合でしか計算が行えなかったFisher-Binghm積分の数値計算を、次元が100の場合まで可能にすることに成功した。 特殊直交群上のFisher積分について研究し、特にFisher積分の消去イデアルを生成する微分作用素の集合を明示的に与えることに成功した。また、その証明の過程で、Fisher積分の消去イデアルは多項式係数の微分作用素環における極大な左イデアルとなることを示した。 研究計画において予定していたホロノミック勾配法を利用したソフトウェアの実装と公開として、ホロノミック勾配法を実装したパッケージの開発のプロジェクトに参加し、象限確率を計算する部分の実装を担当した。そこでは、統計処理ソフトRのパッケージとして象限確率を計算するホロノミック勾配法のソフトを公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
象限確率の数値計算へのホロノミック勾配法の応用に関してまとめた竹村彰通氏との共著論文と、 多面体領域の正規確率にホロノミック勾配法を応用するために必要な基礎研究をまとめた単著論文の学術誌への計算が決定した。 Fisher-Bingham積分の研究に置いては、竹村彰通氏との共同研究により、Fisher-Bingham積分とそれらの微分の漸近挙動が分かるという新しい方向性の進展があった。この漸近挙動に関する結果により、Fisher-Bingham積分のホロノミック勾配法による数値計算が、球面の半径が大きい場合でも安定して行えるようになった。また、ホロノミック勾配法の初期値計算における工夫などにより、数値計算の性能が飛躍的に向上した。 特殊直交群上のFisher積分に関しては、消去イデアルの生成系の明示的表示を決定するなどの理論的な結果が得られた。 ホロノミック勾配法のソフトウェアの公開に関しては、象限確率をホロノミック勾配法で計算するプログラムを、統計処理環境Rから呼び出せるようにするなどの改良を施し、オンライン上に公開した。 本年度は、以上のような、理論と数値計算の両方面からの研究結果が得られ、概ね良い進捗状況だったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
多面体領域の正規確率にホロノミック勾配法を応用するためには、未解決の理論的問題が残っている。この理論的問題に取り組むと同時に、簡単な多面体領域の場合において、ホロノミック勾配法による正規確率の数値計算の性能を調べる。
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Research Products
(6 results)