2014 Fiscal Year Annual Research Report
HTLV-1感染細胞におけるエピジェネティクス制御機構および疾患との関連の解明
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14J03189
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安間 恵子 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | HTLV-1 / エピジェネティクス / ChIP-seq / RNA-seq / 発がん / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)等の疾患を引き起こすウイルスである。ウイルス遺伝子の一つであるHTLV-1 bZIP factor(HBZ)は、全てのATL症例で発現が保持される唯一のウイルス遺伝子であり、疾患を惹起する重要な要因と考えらえる。本課題ではHBZ遺伝子によるアセチル化酵素p300及び脱アセチル化共役因子NCOR2を介するエピジェネティクス制御機構、さらにその疾患における役割を解明することを目的とした。 まず、ATL細胞株ED、Tlom1において、NCOR2をレンチウイルスベクターにてノックダウンしたところ、細胞増殖が抑制された。ATL細胞株において、NCOR2は増殖を促進する可能性が示唆された。 次にHBZによるエピジェネティックな遺伝子制御の標的遺伝子の解析のため、マウスCD4陽性細胞にHBZ遺伝子をレトロウイルスベクターにて導入後、HBZ発現細胞を分取し、RNA抽出、及びAcH3、AcH3K9、AcH3K18、AcH3K27によるChIPを行い、RNA-seq、ChIP-seqにて解析したところ、抑制性シグナルに関与する遺伝子PD-1、CCR4、IRF4、 T-cell immunoglobulin and ITIM domain(TIGIT)等の発現はHBZにより上昇しており、そのプロモーター領域のヒストンアセチル化も亢進していた。また、TIGITの発現は、ATL症例及び、HAM/TSP症例のHTLV-1感染細胞で上昇していた。 さらに、Tag付HBZ遺伝子を同様に導入し、ChIP-seqにて解析したところ、HBZはTIGIT遺伝子のプロモーター領域にリクルートされていた。 今後はTIGIT遺伝子の発現上昇の意義及びメカニズムについて、さらに詳細な解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HBZによるエピジェネティックな遺伝子発現制御の解析のために、平成26年度はRNA-seq、ChIP-seqによるゲノムワイドな解析を行い、HBZがエピジェネティックに制御していると考えられるいくつかの候補遺伝子を得た。それらの中で、抑制性シグナルに関与するTIGIT遺伝子について、プロモーターアッセイおよび、タグ付きのHBZ遺伝子によるChIP-seqを行い、さらに詳細な制御機構の解析を進めている。その結果、HBZ遺伝子がTIGITのプロモーターを活性化すること、さらにHBZがTIGIT遺伝子のプロモーター領域に誘導されていること、といった新たな知見を得られた。今後はさらに詳細なメカニズムの解析のため、関連する宿主因子についても解析していく方針である。 また、HBZ発現細胞におけるTIGITの機能についても並行して解析を進めている。 これらの結果について、平成27年度は17th HTLV-1 meeting (2015年6月、フランス)および第74回日本癌学会学術総会(2015年10月、名古屋)にて発表する予定であり、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、エピジェネティックな解析のため、脱アセチル化酵素共役因子であるNCOR2にターゲットを絞って解析していた。これまでの解析で、NCOR2に関してはATL細胞株の増殖を促進するという知見は得られたが、HBZがNCOR2を介して遺伝子発現を制御する機構についての解析は進んでいない。 このため、HBZ遺伝子が関与するエピジェネティックな制御を網羅的に解析する目的で、HBZ遺伝子導入マウスプライマリ細胞を用いたRNA-seq、およびアセチル化ヒストンAcH3, AcH3K9, AcH3K18, AcH3K27によるChIP-seqを行い、HBZがエピジェネティックに発現を制御する標的遺伝子について、ゲノムワイドに解析した。 これまでにHBZ遺伝子導入プライマリ細胞を用いたRNA-Seq、ChIP-seqによりHBZ遺伝子がエピジェネティックに制御する候補遺伝子の一つとして、TIGIT遺伝子を見出している。今後はエピジェネティック制御機構の詳細な解析のため、宿主因子との関連をプロモーターアッセイを用いて検討していく方針である。これまでのプロモーターアッセイで、HBZ遺伝子がTIGITのプロモーターを活性化することが分かっている。さらに、HBZ、TIGITプロモーターと共導入することでHBZによる活性化が減弱する宿主因子も見出している。HBZ遺伝子がこの宿主遺伝子の作用によりTIGITプロモーターを活性化している可能性を考え、詳細な検討を行っていく方針である。
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Research Products
(1 results)