2014 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケールエフェクトを解明可能な原子レベル燃料電池シミュレータの開発
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14J03277
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
許 競翔 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | シンタリング / 分子動力学 / 固体酸化物形燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、多孔質構造におけるシンタリングが誘起する劣化機構を解明可能なシミュレータの開発及び、多孔質構造におけるシンタリングメカニズムの解明に関する研究を行った。固体酸化物形燃料電池の燃料極は多孔質構造であるNi/YSZがよく使われているが、作動中に起こるNi粒子のシンタリングによって、Ni/YSZ多孔質構造が変化し、電極の性能が劣化する。多孔質構造における原子スケールのシンタリングメカニズムを解明するためには、分子動力学シミュレーションが有効である。シンタリングは水蒸気との化学反応に影響されるが、従来の分子動力学法はその化学反応を扱えないため、シンタリングのメカニズムを解明できなかった。そこで、化学反応が扱えるように電荷の変化と結合の生成・解離を表すことが可能な原子間ポテンシャル関数に基づくシミュレータを開発した。開発したシミュレータを用いて、水蒸気雰囲気におけるNi粒子のシンタリングシミュレーションを行った結果、実験的に観察されている水蒸気環境によるNi粒子のシンタリングの促進現象を再現することに成功した。Ni粒子の表面が酸化されることで、シンタリングが促進されるメカニズムを明らかにした。このシミュレータにより、燃料電池における原子スケールの化学反応を伴う劣化機構の解析が可能になると期待できる。また、シンタリングによる構造変化と劣化現象を解明するために、分割統治法に基づいて2億原子を扱える大規模多粒子分子動力学シミュレータを開発した。そして、YSZ粒子サイズがNi粒子サイズより小さい時、燃料拡散経路が切断される劣化現象を抑制できることを提案した。このシミュレータにより、原子スケールにおけるシンタリングによる構造の変化及び劣化機構の予測が可能になると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、化学反応が扱える分子動力学法シミュレータ及び多孔質構造における劣化機構を解明可能な大規模分子動力学シミュレータの開発に成功した。それらのシミュレータを用いて、シンタリングは水蒸気によって促進されるメカニズムを明らかにし、またYSZ粒子サイズがNi粒子サイズより小さい時、燃料拡散経路が切断される劣化現象を抑制できることを明らかにした。以上のシミュレータ群により、電極反応の解析、燃料電池における原子スケールの化学反応を伴う劣化機構の解析及びメソスケールの多孔質構造の変化による劣化機構の解析が可能になった。以上より、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、電極材料の耐久性の向上のために、酸化反応に伴う応力亀裂の発生メカニズムの解明を行う。具体的には、開発した化学反応が扱える分子動力学シミュレータを用いて、Ni-YSZでの酸化反応を伴う応力・電荷変化と応力ひずみを計算し、多孔質構造と応力亀裂メカニズムの関係を世界に先駆けて解明する。また、シンタリングによるメソスケールの多孔質構造がマクロスケールの電極特性に与える影響を理解するため、電流の効果を取り込むためのアルゴリズムを設計し、開発した大規模分子動力学シミュレータに実装することで過電圧シミュレータを開発する。電子拡散係数等を計算することで、シンタリングによる電極特性変化を評価する。その結果により、多孔質構造の変化に対して、電極特性が劣化しづらい多孔質構造を設計する。
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Research Products
(8 results)