2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J03286
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 侑亮 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 光 / 二酸化炭素 / 銅 / ニッケル / カルボキシル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、銅およびケトンを用いた光によるアリル位炭素―水素結合のカルボキシル化反応に関して、研究を進めた。本反応の鍵となるケトン触媒を検討した結果、キサントンが効率よく目的生成物を与えることを見出した。また、さらなる最適化のため、さまざまなケトンを合成し、反応条件に付したところ、3,6-ジフェニルキサントンを用いたときに、もっとも高い収率で生成物のカルボン酸を与えることがわかった。これを最適条件とすることで、天然物であるβ-ピネンを含むさまざまなアリル化合物に本反応を適用することができた。(Chem. Eur. J., in press) 次に、上記の反応から発展させ、光と遷移金属触媒の協同作用によるベンジル位の炭素―水素結合カルボキシル化反応に着手した。さまざまな遷移金属と基質の組み合わせを検討した結果、2-メチルベンゾフェノンを用いた際に、ベンジル位炭素―水素結合のカルボキシル化体が観測された。さらに詳細な検討の末、本反応は遷移金属のみならず、塩基や還元剤の添加さえも必要としないことが明らかになった。さらに、本反応は太陽光で進行することも明らかにした。(J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 14063-14066) 続いて、トルエン誘導体のベンジル位炭素―水素結合のカルボニル化を目標とし、紫外光を照射しながら、さまざまな遷移金属触媒の存在下、カルボキシル化反応の検討を行った。その結果、ニッケル触媒を用いたときに反応が進行することを見出した。具体的には、p-キシレンに対し、ニッケル触媒およびケトン触媒としてキサントンを用い、ベンゼン溶媒中1気圧の二酸化炭素雰囲気下、365nmの紫外光を2時間照射したところ、p-トリル酢酸が72%の収率で得られた。詳細な反応機構と基質適用範囲に関する検討を現在行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、銅触媒と光の協同作用によるアリル位炭素ー水素結合の直接カルボキシル化反応に関する検討を行い、完成させ、国際化学会誌に報告した。この反応は、これまで困難であった炭化水素の直接カルボキシル化反応であり、遷移金属と光の協同作用による反応という研究指針が有用であることが証明された。 続いて、同様にベンジル位の炭素―水素結合カルボキシル化反応に着手した。さまざまな遷移金属と基質の組み合わせを検討した結果、2-メチルベンゾフェノンを用いた際に、ベンジル位炭素―水素結合のカルボキシル化体が観測された。さらに詳細な検討の末、本反応は遷移金属のみならず、塩基や還元剤の添加さえも必要としないことが明らかになった。この結果は、当初予期していなかったが、光のみを駆動力として進行する新しいカルボキシル化反応であり、有機合成分野において非常に大きな成果である。また、添加剤を使用しない利点を活かして、ワンポットで生物活性物質に見られるベンゾジアゼピン骨格を合成することに成功している。さらに本反応は太陽光でも進行し、これまでに例の無いきわめてクリーンなカルボキシル化反応である。以上より、本反応は、有機合成分野にとどまらず、さまざまな分野で応用されることが期待される。 最近では、より単純なトルエン誘導体のカルボキシル化反応を目指し、さまざまな遷移金属触媒と光による反応を検討した結果、ニッケル触媒を用いた際に、効率よくカルボキシル化が進行することを見出した。さらなる検討を行い、反応の有用性を確かめていく予定である。 これらの結果から分かるように、本研究課題において当初計画していた以上の大きな進展が見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
ニッケル触媒および光を用いたベンジル位直接カルボキシル化反応に関して、さらなる検討を進める予定である。具体的には、ニッケル錯体、塩基、溶媒などを幅広く検討し、最適な条件を決定する。その後、本反応の反応機構に関する詳細な調査を行い、論文としてまとめる。 さらに、研究課題である「遷移金属触媒と光の協同作用による反応の開発」に則り、新たな反応の探索を行う。すでに予備検討によって、ベンゾフェノンと二酸化炭素が、光照射下、特定の添加剤を加えることでカルボニル炭素同士が還元的に結合したベンジル酸誘導体が得られることを見出している。この反応のさらなる検討を行うとともに、得られたベンジル酸誘導体の変換反応に着手する。すなわち、ベンジル酸エステルに対し、遷移金属触媒を作用させ、アシル金属中間体を経由することで、求電子剤のエステル化を検討する。これまで二酸化炭素は、求核剤と反応させることでカルボキシル化する反応剤として用いられてきたが、本反応が完成すれば、二酸化炭素を形式的に求電子剤と反応させることができるため、新たな合成手法を提供することができると考えている。
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Research Products
(6 results)