2014 Fiscal Year Annual Research Report
分子内配位結合を鍵骨格にもつ有機太陽電池のための色素材料の開発
Project/Area Number |
14J03287
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下河 広幸 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | π共役 / 機能性材料 / 有機色素 / ホウ素 / 分子内配位結合 / 色素増感太陽電池 / 有機太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究において、分子内B-N配位結合を含む骨格を電子受容性骨格としてもつ一連のD-π-A型の色素材料を開発してきた。特に、ジケトピロロピロール(DPP)をπスペーサーにもつ色素HS1を用いた色素増感型太陽電池(DSSC)は有機太陽電池としては極めて高い短絡電流密度を示す一方で、開放電圧は一般的なDSSCで得られる開放電圧よりも低かった。これは、DPP骨格の高い平面性に起因して酸化チタン上で色素の物理吸着や色素同士の凝集が生じるためと考えられる。そこで、本年度は、HS1のDPP骨格の窒素上の置換基を嵩高い2,6-ジアルコキシルベンジル基に置換し立体的に被覆することで、酸化チタン上で色素の物理吸着や色素同士の凝集を抑制できると考え、色素HS2を設計・合成した。膜状態での光吸収スペクトル測定の結果、HS2では2,6-ジアルコキシルベンジル基によりDPP骨格を被覆することで色素同士の凝集が効果的に抑制できることがわかった。HS2を用いたDSSCを作製し、光電変換特性を測定したところ、開放電圧は0.53 Vを示し、同条件でHS1を用いた場合 (0.50 V) から向上することがわかった。 また、新規π共役骨格の創成を目的に、オキサリルピロリド誘導体を配位子として分子内で二つのO-B-N配位結合をもつ二核の二フッ化ホウ素錯体1を設計・合成した。合成した1の単結晶X線構造解析の結果、オキサリルピロリドのπ共役骨格は、ホウ素に配位子することにより、アザフルベン骨格二量体の構造特性を示すことを明らかにした。この構造特性を反映して、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定では1は極めて高い電子受容性を示すことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、分子内B-N配位結合をもつ有機太陽電池ための色素材料の開発に関して、材料の電子構造と立体構造をさらに最適化した材料を開発した。DSSCにおいて、色素材料のπ骨格を嵩高い置換基で立体的に被覆することが、色素の酸化チタン上での凝集を抑制し、開放電圧を向上させることがわかった。この結果は今後の分子設計において有益な情報を提供した。 また、新規π共役骨格として、高い電子受容性をもつ二核のホウ素錯体1の開発とその基礎特性評価にも成功し、新しいπ電子材料の開発につながる重要な知見を得ることができた。これを電子受容性の鍵骨格に用いて、様々な電子供与性骨格と組み合わせた一連の新規π電子系材料の開発を進め、これらの化合物を太陽電池材料へと展開することで、光電変換効率の高効率化が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、DPPをπスペーサーにもつ色素については、アンカー骨格や電子供与性骨格の末端の置換基の異なる色素を開発し、それらの電子構造と太陽電池特性を測定し、その相関関係について検討する。 オキサリルピロリドを配位子にもつ二核ホウ素錯体については、今後は電荷輸送性材料や太陽電池材料への展開を指向して、本骨格を鍵電子受容性骨格に用いた一連の新規化合物の開発に取り組んでいく予定である。 また、分子内 金属-N 配位結合をもつスピロ型色素材料の開発に関しても、モデル化合物の合成を進め、その基礎特性と太陽電池測定の評価を行っていく予定である。
|
Research Products
(1 results)