2015 Fiscal Year Annual Research Report
認識的正当化問題に対するウィトゲンシュタインの治療的応答の洗練
Project/Area Number |
14J03344
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白川 晋太郎 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ブランダム / セラーズ / ウィトゲンシュタイン / 所与の神話 / 認識的正当化 / プラグマティズム / 認識論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、認識的正当化に関する伝統的な問題をウィトゲンシュタイン的なプラグマティックなアプローチによって解決することである。つまり、信念の正当化の作業を徹底すれば、無限後退、独断的な前提、循環のいずれかに陥るという問題、および、印象やセンスデータといったものに訴えても信念を正当化することはできないというセラーズの「所与の神話」批判を踏まえた上で、経験的信念の正当化は可能であることを示すことが目的である。 以上を踏まえると、経験的信念の正当化の出発点となるべき基礎は次の三つの条件を満たしていなければならない:(a)概念的、(b)さらなる推論的な正当化に訴えることなく何らかの意味で正当化されている、(c)現実世界のありかたを反映しているという意味で真である。 本年度は条件(b)(c)を満たす方法を与えた。(b)の満たし方:「私的約定」という概念を考案した。観察報告を私的約定の表明として理解すれば、ある主体の観察報告内容は、その人にとっての決まりなので不可謬・不可疑となる。だが他者にとっては決まりではないので、誤りうるし疑いうる。ある人の観察報告が他者に「正しい」と承認されたとき、その観察報告は客観的な意味で不可謬・不可疑になり条件(b)を満たせる。条件(c)の満たし方:伝統的なプラグマティズムの真理論を推論主義の枠組みに取り入れ、ある観察報告から推論的に導かれる「行為」の「成功」を基準に観察報告の真理条件を与えた。 二年間の研究成果をまとめると、私的約定の表明として観察報告がなされ(条件a)、それが他者から正しいと認められ(条件b)、そこから推論的に導かれる行為が成功するならば(条件c)、その観察報告は経験的信念の基礎としての三つの条件を満たすことになる。こうした全体論的な基礎付け主義によって経験的信念の正当化は可能であることが示されたので、当初の研究目的は予定通り達成された。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)