2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J03350
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 弘毅 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ケインズ経済学 / マクロ経済学 / 経済動学 / 景気循環理論 / 経済成長理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主要業績は,査読付き英語学術書掲載予定論文1本および査読無し英語論文2本並びに英語研究報告3件および邦語研究報告6件である。 査読付き英語学術書掲載論文1本は,昨年度刊行された拙稿を拡張した研究の成果である。本稿は,非ワルラス的数量制約(有効需要の原理)を導入した異時点間の最適化問題を考察することにより,ケインズ経済学における投資原理の1つである「利潤原理」にミクロ経済学的基礎づけを与えるとともに,そのために必要な想定(静学的期待)を明らかにし,さらに投資の「稼働率原理」に対する理論的基礎づけの可能性を示唆するものである。査読無し英語論文2本は,ともにディスカッション・ペーパーとして刊行されているものであり,個別企業の資本調整過程における異質性および不確実性がマクロ経済の安定性に与える影響を考察した論文と製品ライフ・サイクル存在下におけるプロダクト・イノベーションおよびその用に供する研究開発並びにその結果として得られる企業の成長を考察した論文からなる。 英語研究報告3件は,上述のプロダクト・イノベーションについて論じた拙稿の報告(1件)およびタイム・ラグが経済変動に与える効果をケインズ経済学の視点から論じた拙稿の報告(2件)からなる。後者の報告で用いられた拙稿は,査読付き学術雑誌の審査を受けている。邦語研究報告6件は,すべて上述した報告に関連した報告である。 これらの研究は,需要制約を重視するケインズ経済学に対する基礎づけを与える点において,研究課題の目的の一部を達成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の欄で述べたように,本年度は,査読付き英語学術書に拙稿1本を掲載させ,ディスカッション・ペーパーの形で拙稿2本を刊行させることができた。これらは,いずれもマクロ経済の不均衡を扱うケインズ的動学理論またはそのミクロ的基礎づけに関するものであり,本研究課題の目的を遂行している。 また,需要の飽和と研究開発活動という側面からケインズ的動学理論に貢献を行うという,研究計画当初は想定していない方向における研究のさらなる進展があったことが非常に喜ばしい。 しかしながら,研究計画にある金融市場の動向に関する分析が十分に検討されていない。 以上の観点から,本研究課題の遂行に対して,現時点で「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
財市場の非ワルラス的不均衡分析の長期動学化は一通り完成したため,本研究課題の研究計画通り,財市場の不均衡と金融市場の動向の相互作用の分析に着手するが,それと同時に,研究実績の概要の欄で述べたように,需要の飽和というマクロ経済の不均衡を生み出す要因観点による,研究開発活動と経済成長の関係の分析も行う。これは,ケインズ的不均衡状態の長期動学を基礎づけるという意味では,本研究課題の目的には反しておらず,非ワルラス的分析の長期動学化とは異なる形でのケインズ的動学理論の基礎づけを提供するものである。
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Research Products
(13 results)