2014 Fiscal Year Annual Research Report
複合的その場解析による不均一触媒の微視的反応メカニズムの研究
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14J03360
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
豊島 遼 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 不均一触媒 / 放射光分光 / 密度汎関数法 / CO酸化反応 / 金属ナノ粒子 / 二元合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自動車や工場からの排ガスに含まれる有害物質を無害化する三元触媒の反応メカ二ズムを明らかにすることを目標としている。触媒反応は触媒に含まれる白金族金属微粒子上で進行すると考えられているがその詳細は明らかでない。現実に使用されている触媒における反応を理解することを目指して、金属単結晶と微粒子において、無害化反応の一つである一酸化炭素(CO)の酸化反応に注目して研究を行っている。物質表面の状態を知るために放射光施設においてX線光電子分光(XPS)による観測を行っている。本手法は触媒の表面とそこで反応する分子の両方を観測することが可能であり、触媒反応を追跡する上で優れている。 本年度はまず金属微粒子試料の調製を行った。反応中心となるパラジウム(Pd)ナノ粒子をシリコン(Si)基板上に担持した。この試料について、その空間的な分布、化学的な状態を分析した。その結果、試料調製時点での表面は酸化されていることが分かった。 本研究では単一組成の触媒だけでなく、二金触媒上での触媒反応について検討する予定であり、本年度はその基礎的なデータを得るためにPd-金(Au)合金単結晶を購入し、その表面に対するCO分子の吸着挙動を測定した。その結果、Pd-Au合金におけるCO分子の吸着サイトやその安定性について明らかにすることが出来た。 密度汎関数法に基づいた計算化学用セットアップを新たに立ち上げた。単結晶や微粒子における実験結果に対して、計算化学を組み合わせることによって、より詳細にその表面の状態を検討することができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実験試料の調整、実験装置の高性能化、計算化学用セットアップの構築に集中して研究を行った。 粒子系を研究するために、第一の目標である金属微粒子の調製を行った。具体的には、有機配位子で保護された10 nm Pdナノ粒子をシリコン基板上にスピンコート法により担持した。この試料について各種分析法を用いて、触媒反応を行う前の表面が酸化されている事を明らかにすることが出来た。この情報から、放射光施設での実験に用いる際には、表面を還元し、金属状態を作り出してから、触媒反応条件に置く必要があることが分かった。 計算化学用セットアップについては、XPSのスペクトルから求まるCore-Level Shiftを理論的に算出し、これを実測値と比較することによって表面の化学状態、構造を決定することが出来るようになった。 以上により、来年度の放射光施設での測定、解析のための十分な準備をすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調製した金属微粒子の試料について放射光施設にて触媒反応が進行する表面をその場観測することを予定している。金属微粒子の表面については、反応前では酸化されていることが分かっているので、水素等を用いて表面を還元する。今後はそれのためのセットアップを組むことが必要となる。 合金系については単結晶を用いて表面状態を検討した後に、粒子の調製、測定を行っていく。 計算化学においては、今後必要な計算量が増えていくことが予想されるので、計算機を増設する予定である。実触媒系に近い試料を用いてCO酸化反応を観測した場合に、表面の状態を一義的に決定することが困難であるとの知見を得ているので、予め表面に生成する可能性のある化学種について、シミュレーションで検討を行う必要があると考えている。XPSスペクトルの再現だけでなく、表面構造の安定性や、反応中の表面状態についてもシミュレーション出来るように取り組んでいく。
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