2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J03364
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 健治 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | Cerebellum / Temporal Processing / Timing Movement / Electrophysiology / Inactivation |
Outline of Annual Research Achievements |
1秒以下のタイミングには、絶対的な時間間隔の値を同定する絶対的なタイミング(absolute timing)と、等間隔の相対的間隔に基づくタイミング(relative timing)がある(Grube et al., 2010)。小脳の時間知覚を知るにはこのようなタイミングの種類間との関係の違いも検討されるべきである。そこで本研究では、時間知覚に基づく運動制御を必要とする行動課題をラットに訓練して小脳を薬理学的に不活性化させ、行動課題のパフォーマンスへの影響を調べることにより、1秒以下の時間処理に関わる小脳の寄与を調べた。 現在までの研究の進捗状況として、上記のような絶対的な時間と相対的な時間を扱うような行動訓練を実施し、その課題を行っている時のラットが時間を処理していることを示す証拠をまとめた(Yamaguchi & Sakurai, 2014)。小脳皮質の一部を薬理によって一時的に不活性化させた状態でこの行動課題を行わせた際、時間処理の正確性が低下すれば、不活性化された部位が時間処理に深く関係していることが示唆される。実験の結果、ラットにabsolute timingの処理を必要とする課題を行わせたときには、小脳皮質を不活性化させる薬液を投与した時、生理食塩水を投与した時よりも有意に課題の成績が悪くなった。対して、relative timing処理を必要とする課題を行わせた時には、不活性化を行ったセッションと行わなかったセッションで課題成績の違いは無かった。これらのことから、小脳皮質はabsolute timing、つまり絶対的な時間間隔の処理には必要不可欠だが、連続的な間隔の間の時間、relative timingには必要でないことが示された。この結果をまとめた実験論文は国際誌に投稿し、現在審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、前年度より引き続き行っていたタイミング課題中の小脳スパイク活動記録および同課題に対する小脳皮質不活性化の影響を調べる実験を実施した。スパイク活動記録に関しては、これまで小脳皮質プルキンエ細胞のみを記録対象としていたが、本年度より小脳皮質の投射先である深部小脳核の記録も開始した。この記録に成功し、ラットが一定の時間間隔を表現していると考えられる時、深部小脳核のニューロンはその間隔が進むにつれ活性を上げ、間隔の終了に伴って活動を急激に下げるパターンを確認した。また、小脳皮質不活性化の実験においては、ラットが絶対的な時間間隔を用いて課題を遂行していると思われる条件では不活性化の影響が有意に見られ、等間隔の時間を連続的に表現させる、リズムを伴う時間表象を用いる課題の成績にはほとんど影響が見られないことが分かった。この成果を論文にまとめて本年度中に国際誌への投稿まで至っており、大きな研究の進展であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
運動自体は大きく変わらないが、絶対的な時間と相対的な時間それぞれを扱う条件を設定することができる行動課題の学習を完成させたラットにおいて、現在少数個体から小脳プルキンエ細胞のスパイクを記録することに成功している。このデータから、小脳のプルキンエ細胞は、ストップウォッチのボタンを押して時計を停止させるかのように、運動の完了時に単純スパイクの活動を休止させることで、運動タイミングを実現していることが示唆された。また、小脳皮質からの入力を受けている深部小脳核ニューロンの活動を記録すると、時間計測の開始からどんどん活動が増加し、行動が完了した時に急激に減少するパターンが示された。これらのデータについては現在まで論文にまとめて発表するために十分な量が集まっていないため、今後も同様の実験を続けていく予定である。
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Research Products
(2 results)