2014 Fiscal Year Annual Research Report
究極的DNA鑑定である微量混合試料分析法の開発と評価
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14J03372
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
真鍋 翔 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | DNA多型 / マイクロサテライト / 法数学 / 微量混合試料 / continuous model |
Outline of Annual Research Achievements |
微量のDNAが混合した試料の分析結果を解釈する方法は、未だ確立されたものはないが、最近提唱されたcontinuous modelは、ピークの高さに影響を及ぼす様々な因子を考慮することで、より厳密な確率的評価を行えると期待されている。しかし、この方法は実践的なデータよりも理論的な条件設定が中心であり、パラメータの設定値やプログラムのアルゴリズムに問題点を有している。そこで、continuous modelに基づいたプログラムを独自に作成し、検証を行った。 現在の法医鑑識におけるDNA検査(Identifiler)において検出されるピーク高は、PCR増幅効率(A)、ヘテロ接合体のピーク高比(Hb)、スタターと呼ばれるアーチファクトの割合(SR)等の因子が影響して決まる。そこで、単一個人の口腔内細胞より抽出したDNA試料(234検体)をIdentifilerで分析し、得られた結果を基に各パラメータの確率分布を推定した。その結果、Aは正規分布、Hb、SRは対数正規分布に近似できることが示された。 続いて、フリーソフトである統計解析ソフトRを用いてcontinuous modelのプログラムを作成した。A、Hb、SRに加え、混合試料中の各関与者のDNA混合比(MR)をパラメータとし、シミュレーション(MCMC法)に基づいて分析するようプログラムした。また、被疑者等のDNAが試料中に含まれるか否かを確率的に評価する指標(尤度比)を計算できるようにした。さらに、型が既知のある2者のDNAを1:9、1:3、1:1で混合した試料各1例を分析して、結果を検証した。2者のうちの1人を仮に被疑者として尤度比を算出したところ、2者のDNA量に差のある1:9、1:3の試料における尤度比は、ピーク高を利用しない従来の方法による尤度比よりも高い値を示し、被疑者の関与をより強く示唆できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験試料を用いたパラメータの確率分布の推定はおおむね計画通りに進行したが、一部のローカスのSRでは、単純な対数正規分布は観測データにあまり当てはまらなかった。このため、より複雑な確率分布のモデルを立てる必要性が生じ、研究の進捗状況はやや遅れた。一方、解析プログラムは当初の予定よりも早く原型を完成させることができ、プログラムの検証作業も実施した。よって、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
微量混合試料では、DNA量が少ないために本来検出されるはずのアリルが検出されないこと(アリルドロップアウト)やDNAが断片化を起こしている場合がある。現在のプログラムではこれらの現象を扱えず、微量試料の分析に完全には対応していない。そこで、アリルドロップアウトとDNA断片化の程度についても扱えるようにプログラムを改良する。さらに、プログラムの検証はまだ不十分なので、分析試料を増やしたり従来のピーク高を利用しない方法と比較したりして、混合試料中の関与者数や尤度比の値について検証を重ねる予定である。
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Research Products
(6 results)