2014 Fiscal Year Annual Research Report
永久凍土地帯における活動層が有機物輸送機構へ与える影響の解明
Project/Area Number |
14J03382
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸谷 靖幸 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 寒冷地域 / 気候変動 / 凍結・融解 / 分布型流出モデル / 融雪モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,気候変動が問題となっており,要因は二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスである可能性が指摘されている.北極圏のような極域では気候変動が生じ易く,温暖化に伴い活動層(夏期に融解する層)の厚さが変化し,河川流量や永久凍土に蓄積する貧酸素水や有機物流出量が変化すると言われている.これらが閉鎖性水域へ流入した場合,富栄養化を引き起こし大量のメタンが生成される可能性がある.生成されたメタンが大気へ放出した場合,将来予測以上の気候変動が生じる可能性があり,永久凍土からの有機物流出量の把握は重要である.しかし,既往の研究では凍結・融解を考慮した活動層厚の変化が河川流出や有機物輸送機構へ与える影響が解明されていない.そこで本研究は永久凍土地帯における活動層が有機物輸送機構へ与える影響の解明を目的とする. 初年度である本年は,寒冷地域において重要となる融雪現象について,気象データや河川流量などの観測データが豊富に存在する北海道常呂川流域を対象に検討した.まず,熱収支方程式を基に融雪モデルを構築することで,観測値における積雪深の変化を再現出来ることを示した.また分布型流出モデル(DHM)と融雪モデルを結合させDHM-SMを構築し,複数年の流出解析により本モデルの検証を行い,良好な再現精度を得た.さらに気候変動が寒冷地域に与える影響を評価するため,GCM出力値をDHM-SMの入力データとして適用することで河川流況の将来予測も行った. 有機物輸送機構に関する検討は,寒冷地域である北海道知床を対象に,既往の現地観測結果を基に河川流量と有機物量(土砂流出量,全リン,全窒素)の関係式(有機物量推定式)を作成した.さらに気候変動の影響を把握するため,GCMの降水量を貯留関数法へ適用し将来の河川流量の推定を行った.この河川流量を有機物量推定式へ入力することで,有機物輸送量の将来予測手法の検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活動層の凍結・融解モデルを構築する上で重要となる融雪現象を明らかにするため,過去の研究で提案されている熱収支方程式を基に融雪モデルを構築し,観測された積雪深を良好に再現できることを示した.さらに,寒冷地域で重要となる融雪期の河川流況を再現するため,構築した融雪モデルを分布型流出モデルと結合したモデル(DHM-SM)を構築し,複数年で再現計算を行うことでモデルが観測値を非常に良く再現できることを示した.また,近年問題となっている気候変動が寒冷地域の河川流況へ与える影響についても,複数の気候シナリオにおける全球気候モデルGCMの出力値をDHM-SMへ適用することで,将来気候において河川流況がどのように変化するかを明らかにした. さらに,活動層から流出する有機物量推定へ向けた検討として,北海道知床における現地観測結果およびGCMの出力値を数値モデルへ適用することで推定された河川流量を用いることで,将来の流域から流出する有機物量の予測手法の検討も行った.よって,本研究で目的としていた項目に関して着実に成果を得ることが出来ているため,研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は初年度に構築した融雪モデルを考慮した分布型流出モデルの高精度化を行う.さらに初年度とは異なる流域へ適用することで再現精度の検証を行う.また,熱収支法によって構築した融雪モデルの概念を基に,凍結・融解モデルの構築を行い,分布型流出モデルへ導入することを目標とする.また,計画通りに現地観測によって観測データを取得することが出来ない場合,衛星データや再解析データなどを用いることで研究を進める.さらに,今年度も気候変動が寒冷地域などの流域へ与える影響を評価するため,複数のGCMを用いたマルチモデルによる河川流況の将来予測を行う. 有機物輸送機構に関しては,初年度は現地観測によって得られた結果を基に有機物量を推定したが,将来へ向けた予測を行う上では不十分であるため,構築した分布型流出モデルへ有機物輸送モデルを導入し,現地観測結果との比較を行う予定である. また,現地観測は寒冷地域である北海道などを中心として進める予定である.
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Research Products
(8 results)