2015 Fiscal Year Annual Research Report
中高年者のワーク・ファミリー・バランス-大規模横断・縦断研究による検討-
Project/Area Number |
14J03405
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
富田 真紀子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学センターNILS-LSA活用研究室, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 中高年者 / ワーク・ファミリー・バランス / 仕事と家庭の両立 / ワーク・ライフ・バランス / ワーク・ファミリー・コンフリクト / ワーク・ファミリー・ファシリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータの一部を用い、中高年者の仕事と家庭の両立の実態を把握し、ワーク・ファミリー・バランス(WFB)実現に必要な要件を明らかにすることを目的としている。WFBに関してはワーク・ファミリー・コンフリクトとファシリテーション(WFC/WFF)尺度を用いた。本年度は以下の3点を実施した。 1.データ収集:昨年度に続き、NILS-LSAの第8次調査(平成25年10月から平成28年2月まで)によりデータ収集を行った。収集したデータのclean-up作業まで概ね完了した。 2.解析:既収の横断データの解析により以下の結果を得た。 (1)WFC/WFF尺度のクラスタ分析を実施し4クラスタ(ⅠWFC高/WFF低、ⅡWFC高/WFF高、ⅢWFC低/WFF高、ⅣWFC低/WFF低)を抽出した。クラスタにより個人背景要因に有意な偏りが示され、例えば最も理想的であると想定されるクラスタⅢは、女性より男性が多く、家事・介護役割がない場合が多いという特徴が明らかとなった。(2)4クラスタと心理社会的変数および学際的変数との関連を網羅的に検討し、ⅰ)ソーシャルサポートとの関連についてサポート源とサポートの種類の観点から検討を行い、クラスタⅢは家族・家族外からの情緒的および手段的サポートが高くネガティブサポートが低い傾向であること、ⅱ)食生活行動との関連の検討から、クラスタⅢは食品摂取の多様性が高くバランスの良い食生活行動をとっていること、ⅲ)精神的健康との関連の検討から、クラスタⅢは精神的健康が高いこと、の3点が示唆された。 3.結果の公表:結果の一部は学会発表を行った。 本研究の結果は中高年者のWFBの様相を実証した点で意義があり、次年度以降の包括的検討の前提となる重要な知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画としては、NILS-LSAの第8次調査(Time2)においてWFC/WFF尺度を含むデータ収集をすること、および、蓄積済みのデータを用いてWFC/WFF尺度と心理社会的特徴および学際的変数との関係を横断解析により網羅的に検討し、中高年有職者のワーク・ファミリー・バランスの様相を明らかにすることであった。 第8次調査のデータ収集は平成28年2月に終了した。そのclean-up作業も概ね終了したため、次年度に縦断解析を行う予定である。 また、解析に関しても当初の予定通り、既存の第7次調査データ(Time1)を使用し、中高年者のワーク・ファミリー・バランスに関する横断的検討を実施した。これにより、中高年者のワーク・ファミリー・バランスに関してクラスタを抽出し、クラスタとソーシャルサポート、精神的健康といった心理的特徴との関連を明らかにした。また、こうした心理的特徴以外に関しても、栄養変数、身体的健康変数との関連について学際的検討を行い、食生活行動との関連が示唆され、ライフスタイルの特徴が明らかとなった。これらの結果は、学会発表を順次行っており、現在は中高年者のWFC/WFF尺度に関する論文、および、クラスタ分析の結果をまとめた論文を執筆中である。 以上より、本研究は概ね計画通りに進展しており、順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、WFC/WFF尺度の第7次調査(Time1)のデータとデータ収集が完了した第8次調査(Time2)のデータを用いて、以下の3つの解析を実施する。そして、これまでの研究の総括を行う。 1.WFC/WFFの変化について縦断解析を実施する。 2.WFC/WFFの変化が精神的健康および認知機能の変化に与える影響を検討するため、因果の方向性を考慮した縦断解析を実施する。 3.1と2の結果をもとに、中高年者のWFC/WFFの変化が全般的心身健康を捉える複数の心理的側面の変化に与える影響について包括的な縦断解析を実施する。 4.研究の総括を行う。 得られた結果は学会発表するとともに、早急に論文執筆を進め、投稿する。
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