2016 Fiscal Year Annual Research Report
近世オランダにおける宗派間関係-寛容の社会的・政治的機能に着目して-
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14J03411
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安平 弦司 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 寛容 / 宗派間関係 / 公的領域 / 良心の自由 / 裁判 / 救貧 / オランダ / カトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度後半に引き続き、本年度はその全期間を通じて、ユトレヒト大学のJ・スパーンス博士の指導下で在外研究に従事した。本年度前半は、昨年度から行ってきた、都市ユトレヒトの財政問題解決に向けた交渉におけるカトリックの主体性に関する研究を綜合した。分析を通じ、都市のカトリック名士が当該の交渉の中で、《公》なるものを独自に定義づけ、カトリック共同体、特にその貧民の生存の余地を積極的に創り出していたことが明らかになった。この研究成果に関して、2016年4月に古カトリック学国際研究会で口頭報告(ボン大学)を行い、同年9月にはオランダ史専門の学術雑誌BMGN - Low Countries Historical Reviewに英語論文を投稿した(2017年4月現在においてまだ査読結果は得られていない)。本年度後半は、ユトレヒト市裁判所に残された史料を用いて、カトリックに関する言説や彼らが用いた言説を分析した。分析の結果、自らの生存可能性や権利を護持するため、カトリックが多様な種類の戦略を駆使していたこと、そして彼らは時に良心の自由という観念の言及して自己弁護を図っていたが、その観念に関して異なる複数の理解があったことが明らかになった。注目すべきは、良心の自由を拡大的に解釈することで、自らのあるいはカトリック共同体全体の公的領域での権利を積極的に擁護し、時に拡大しようとするカトリック名士たちがいたことである。彼らは時に、都市共同体における合法的かつ傑出した自らの公的地位を掲げ、独自の《公》認識に基づいた主張を展開することで、都市共同体において共有された《公》なるものの境界線を揺るがし、カトリックが宗派的アイデンティティを捨てずに生き残るための余地を創り出していた。この研究成果に関しては、2016年10月にオランダ宗教学会で口頭報告(アムステルダム大学)を行い、英語論文の執筆も進めている。
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Research Progress Status |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(4 results)