2014 Fiscal Year Annual Research Report
層状複水酸化物をベースとする新規光触媒を用いた二酸化炭素の固定化に関する研究
Project/Area Number |
14J03430
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井口 翔之 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / 光触媒 / 光還元 / 層状複水酸化物 / 正孔捕捉剤 / Mott-Schottkyプロット |
Outline of Annual Research Achievements |
Ni-Al LDHを光触媒として用いたCO2の光還元において、反応溶液への塩化物イオン(以下、Cl-)の添加により活性が向上する要因を検討した。反応溶液を分析したところ、Cl-の酸化生成物であるHClOが光照射に伴って生成することを見出した。Cl-の二電子酸化生成物であるHClOの生成量から電子と正孔の消費量比を算出すると、光照射7時間後の値はe-/h+=0.86であった。光照射を行わない場合、触媒が無い場合にはHClOの生成は確認されなかった。これらの結果から、反応溶液中のCl-が正孔捕捉剤として機能しHClOに酸化されていると結論した。 Cl-を添加することによるCO生成量の増加は、Cl-が光照射により生じた正孔を速やかに捕捉するため、励起電子が効率よくCO2の還元に利用されるためと考えられる。 また、電気化学測定によりNi-Al LDHの伝導体下端の準位を推定した。Ni-Al LDHをFTO基板上に固定したものを作用極とした三極式の電気化学セルを組み、電気化学特性を評価した。Mott-Schottkyプロットを作成し、直線近似により外挿したx切片の値から算出したNi-Al LDHのフラットバンド電位は、約-1.3 V vs.Ag/AgClであった。n型半導体の場合、フラットバンド電位が伝導体下端のエネルギーに相当すると考えられる。本研究では、色素(増感剤)とLDHを複合化させた可視光に応答する色素増感型LDH光触媒の開発を目指している。色素増感反応を達成するためには、色素のHOMO、LUMOのエネルギー準位とLDHの伝導体下端の準位との関係が非常に重要である。これまでに得られた知見をもとに、色素とLDHとの複合化について検討を進める所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、反応溶液中の塩化物イオンの光触媒反応における役割を解明し、原著論文として学術誌に報告した(投稿中)。塩化物イオンの酸化生成物である次亜塩素酸が光触媒反応中に生成することを見出し、その生成量を定量した。当初,本年度中に可視光に応答する光触媒システムを構築することを目標としていたが,残念ながら達成されなかった.その前段階である,Ni-Al LDHのバンドエネルギー準位の推定から得られた知見を踏まえ,反応機構の総合的な解明ならびに可視光応答化LDH光触媒の設計に取り組む所存である.
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Strategy for Future Research Activity |
反応溶液中へのCl-の添加効果については、生じた酸化生成物HClOがNi-Al LDHに及ぼす影響に焦点を当て、引き続き検討する。 また、Ni-Al LDHのバンドエネルギー準位についての知見から、複合化させる色素のリストアップを進め、可視光応答化LDH光触媒の設計を行う。
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Research Products
(11 results)