2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J03441
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
塚本 孝政 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 人工光合成 / ポルフィリン / 粘土ナノシート / 有機-無機複合体 / 光誘起酸素化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー問題を解決に向けて、自然エネルギーの活用が強く望まれている。植物の光合成を模して太陽光エネルギーを化学エネルギーへ変換、蓄積する「人工光合成」の実現はその有力な候補の一つとなっている。天然の光合成反応は、色素分子がナノレベルで高度に配列・配向することで達成されているが、この構造体そのものは非常に複雑で人工的に再現することは困難である。そのため本研究課題では、ナノレベルでシート状の構造を有する安価かつ安全な粘土鉱物を用い、そのシート上に色素分子を配列・配向させて検討を行うことで、新たなアプローチによる人工光合成系の構築を目指した。 初めに色素-粘土ナノシート複合体の基礎に着目して検討を行った。その結果、ナノシートに吸着した色素はより光を吸収しやすくなり、また吸収した光エネルギーを失いにくくなることを明らかとした。様々な色素を用いて系統的に評価したところ、この現象は色素のナノシートにへの固定化が原因で起こり、さらに色素の構造によってその固定化力を変化させることでこの現象のコントロールが可能であることを報告した。 続いて、粘土ナノシート上に配列した色素を利用して光触媒反応の検討を行った。一般に光反応中の色素の分解が問題となるが、本系ではナノシートの立体的・電子的保護効果により光触媒色素の分解を大きく抑制できることが明らかとなった。またこの効果により、ナノシート上で分解・変性した色素もまた光触媒活性を保持していた。さらに色素の精密な配列により、一般に色素の高密度存在時に起こる触媒活性の低下を防ぐことにも成功した。この色素-粘土ナノシート複合体は、攪拌時は通常の光触媒色素同様に機能するが、静置により沈降し、反応液からの触媒回収・再利用が可能であるという特徴を有していた。 粘土ナノシートのこれら一連の効果は、太陽光エネルギーを利用する上で有用な性質であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
粘土ナノシート上の色素分子の基礎的光化学挙動に関する検討においては、初めに定性的な評価として色素の吸光係数や発光量子収率などが増大する傾向にあることを明らかとした。このナノシートの有用な効果を定量的に評価するために、分子構造が同様で「カチオン数が異なる分子」、カチオン数が同数で「カチオン性置換基の立体構造が異なる分子」、カチオン数が同数で「疎水性が異なる分子」等、様々な色素分子を設計、合成して系統的に評価を行った。結果として、色素の光化学挙動、吸着挙動にこれらのパラメータがどのように影響してくるかを詳細に明らかにすることができ、これを学理として提唱した。これにより当初の計画以上の進展として、ナノシート上において光化学的性能をより高めることのできる色素の分子設計指針を得ることに成功した。 また粘土ナノシート上のポルフィリン色素を増感剤とした光触媒反応に関する検討においては、初めに定性的な評価として、ナノシートによる光触媒色素の保護効果や、ナノシート上の光触媒色素の高度な配列による光触媒活性の維持効果を明らかとした。このナノシートの効果を定量的に評価するために、光触媒色素の錯金属、カチオン数、周辺官能基などのパラメータを系統的に変化させ、また反応液の溶媒組成、pH、ナノシートへの色素吸着量などの反応条件を様々に変化させ検討を行った。その結果当初の計画以上の進展として、高い触媒活性を持つポルフィリン色素の分子設計指針を得ることができ、また最適な反応条件の探索にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに提唱している、粘土ナノシート上の色素の光化学性能をより向上できる分子設計指針に基づき、高性能な光捕集色素を設計、合成する。この光捕集色素の粘土ナノシート上における基礎的光化学挙動を、紫外可視吸収、定常蛍光、時間分解蛍光スペクトル等の測定により検討する。続いてこの光捕集色素を、これまでに開発した粘土ナノシート上において高い光媒活性を有する光触媒色素と組み合わせ、ナノシート上における光捕集色素から光触媒色素へのエネルギー移動反応の検討を、主に定常蛍光、時間分解蛍光スペクトルの測定により行う。色素の吸着量や光捕集色素と光触媒色素の比などを変化させ、高効率なエネルギー移動反応が進行する条件を探索する。最終的に、ナノシート上においてこの光捕集反応と光触媒反応を連結、共存させ、GC-MSにより触媒反応生成物の評価を行うことで本研究課題である「光捕集機能を有するナノシート型人工光合成系の構築」の達成を目指す。
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Research Products
(10 results)