2014 Fiscal Year Annual Research Report
タイヒミュラー空間のp乗可積分な部分空間の複素解析的構造について
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14J03444
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柳下 剛広 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | タイヒミュラー空間 / 擬等角写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在, リーマン面のp乗可積分タイヒミュラー空間の複素解析的構造について研究を行っている. ここで, タイヒミュラー空間とは標識付きリーマン面の複素構造の変形空間であり, リーマン面のモジュライ空間(リーマン面の等角同値による変形空間)の普遍被覆空間に相当する. その内, リーマン面上の双曲計量に関するp乗可積分なベルトラミ係数(リーマン面の変形度合を表す指標)を代表元に持つタイヒミュラー同値類からなる部分空間をp乗可積分タイヒミュラー空間という. 解析的有限型(双曲面積が有限)なリーマン面のp乗可積分タイヒミュラー空間はその全空間であるタイヒミュラー空間と一致するため, 本研究は無限型リーマン面に対して本質的である. 種数g≧2のコンパクトリーマン面のタイヒミュラー空間は(6g-6)次元複素多様体となり, その有限次元性から様々な結果が得られている. これらの結果の一般のリーマン面への拡張は自然な発想である. しかし, 解析的無限型リーマン面(種数無限のリーマン面など)のタイヒミュラー空間は一般に無限次元となり, 結果の拡張は容易ではない. したがって, その点に関して無限次元タイヒミュラー空間論の深遠なる研究の一端である本研究は意義のある研究だと考えられる. さて, 今年度においては次の結果を得た:(1)リーマン面Rのp乗可積分タイヒミュラー空間には, Rの鏡像上の有界かつp乗化石分な正則2次微分形式からなるバナッハ空間をモデルとする複素構造が入る. (2)RがLehner条件(R上の閉測地線の長さの下限が正)をみたすとき, p乗可積分タイヒミュラー空間上のタイヒミュラー距離は小林双曲距離と一致する. (3)RがLehner条件をみたすとき, 2乗可積分タイヒミュラー空間上のWeil-Petersson計量がケーラー計量となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)研究計画に記述した諸結果について、国内の研究集会および国外の数学者会議にて研究発表を行った。 (2)結果(1),(2)においては学術論文として学術雑誌「Annales Academiæ Scientiarum Fennicæ」に掲載された。 以上の通りおおむね課題研究が進んでおり、その研究結果も申請書に記載した研究内容の通りに得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
Lehner条件をみたすリーマン面の2乗可積分タイヒミュラー空間上のWeil-Petersson計量についての研究を行いたい. Lehner条件をみたすリーマン面の2乗可積分タイヒミュラー空間には複素構造のモデルとして2乗可積分な正則2次微分形式からなるヒルベルト空間がとれる. Weil-Petersson計量はそのエルミート内積から定まる2乗可積分タイヒミュラー空間上のエルミート計量である. この計量に関して, 以下の2点を調べたい:(1)ヴェイユ・ピーターソン計量は非完備か?(2)Weil-Petersson計量から誘導される各曲率は負か? これらの問題はコンパクトリーマン面のタイヒミュラー空間で得られた結果の拡張に相当する. (先行結果、問題(1):Wolpert, 問題(2):Ahlfors)これらの問題も無限次元解析の手法を用いれば肯定的に解決できると予想している. その方向で研究を遂行したい.
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Research Products
(9 results)