2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J03455
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤原 佐知子 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | メカニカルストレス / Rho-GEF / 細胞骨格 / 細胞力覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血管の恒常性維持におけるメカノセンシングの分子機構の解明を目的とする。血管内皮細胞の力覚応答に必要なRhoのGDP-GTP交換因子(GEF)として同定されたSoloに着目し研究を行い、下記の成果を得た。 1. Soloによって活性化されるRhoファミリーメンバーの同定とSoloの機能ドメイン解析 Soloの下流のシグナル伝達経路を解明するため、SoloのGEF活性を検証した。細胞にSoloを過剰発現させ、RhotekinのRho-binding domainを用いたプルダウンアッセイにより候補となるRhoファミリーの活性を測定した結果、SoloはRhoAに対するGEF活性を持つことを確認した。さらにSoloの触媒ドメインのN末側を欠失した変異体はGEF活性を失っていることを明らかにし、SoloのGEF機能を持つためにはN末側が必要であることを明らかにした。 2. 力負荷刺激依存的なRhoAの活性化に対するSoloの関与 RhoAは力刺激の下流で活性化することが知られている。SoloがRhoAに対するGEF活性を持つことを確認したため、力に応答したRhoAの活性化にSoloが関与するかを検証した。上皮細胞にカドヘリンの細胞外ドメインをコートした磁気ビーズを付着させ、永久磁石を培養ディッシュの蓋の上に置くことで、細胞に引張刺激を与えた。力負荷前後でのRhoAの活性をプルダウンアッセイで測定したところ、コントロール細胞では力負荷で有意にRhoAの活性が上昇した一方、Soloを発現抑制した細胞では力負荷依存的なRhoAの活性化は見られなかった。以上の結果から、Soloは力負荷刺激依存的なRhoAの活性化に必要なGEFであることを明らかにした。細胞の力覚応答において、Soloは細胞間接着や細胞基質間接着部位からの力をRhoAの活性化を介して伝えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、機械的力の作用による血管内皮細胞のアクチン骨格再構築のシグナル伝達機構の解明と、メカノセンサーの分子実態の解明を行い、血管の恒常性維持におけるメカノセンシング(力覚応答)の分子機構を明らかにすることを目的とする。本年度はSoloを介したシグナル伝達経路を解明するために、メカニカルストレスに対するSoloの活性化機構と作用機構について研究を実施した。 その結果、Soloが力刺激依存的なRhoAの活性化に必要であることを生化学的解析により明らかにした。さらにSoloのN末領域がRhoA-GEF活性に必要であることを見出し、Soloの活性化メカニズムの一端を明らかにする結果を得た。これらの成果はJournal of Cell Science誌に投稿し受理された(項目13参照)。以上の結果から、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、細胞の力覚応答の分子機構の解明から、細胞集団の秩序形成過程における力覚応答の役割の解明へつなげることを目的としている。 今年度はSoloの欠失変異体の細胞内でのGEF活性評価を行い、構造変化によりSoloの触媒活性が変化する可能性を示唆する結果を得た。今後はSoloのメカノセンサーとしての機能解析をin vitroのGEF活性測定系で進め、張力によるSoloのGEF活性の上昇の可能性を検証しメカノセンサーの分子実体の解明を目指す。 生体を構成する細胞には、細胞間接着部位や細胞-基質間接着部位に力が発生し、作用すると考えられる。これらの部位にかかる力を可視化する蛍光プローブの開発を進め、Soloの活性と細胞間、細胞-基質間にかかる張力の分布との関連を解析する。さらに細胞集団の秩序のある協調的な運動における力覚応答の機能を解明するために、上皮細胞の集団移動、創傷治癒、3次元培養下の上皮細胞の管腔構造形成のモデル実験系を構築する。細胞形態や細胞骨格系蛋白質の変化、張力分布をリアルタイムで可視化解析し、Solo及びSolo結合蛋白質の発現抑制や変異体の過剰発現が上記のモデル系に及ぼす影響を解析する。
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Research Products
(5 results)