2016 Fiscal Year Annual Research Report
クォーク・グルーオンプラズマの非平衡時間発展における粒子生成
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14J03462
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
筒井 翔一朗 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 高エネルギー重イオン衝突 / クォーク・グルーオンプラズマ / ボーズ・アインシュタイン凝縮 / 熱平衡化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究では、高エネルギー重イオン衝突の熱平衡化過程の解明に向けた研究の一環として、グルーオン場が古典Yang-Mills理論で記述されるような初期過程のダイナミクスの解析を行い、パラメトリック不安定性によって比較的小さな運動量をもつモードが不安定化する可能性を示唆する結果を得た。このような不安定現象においては、増幅される古典場の高運動量ゆらぎは粒子を表すと考えられており、結果として粒子数の非常に多い系が実現される可能性がある。そのような過占有系では、Bose-Einstein凝縮体(BEC)が動的に形成されるなどの特異な現象が起きる可能性が指摘されているが、非摂動性の強い量子系でそのようなダイナミクスが系統的に調べられた例はこれまでなかった。
BECの動的生成現象の定性的な性質は、ある程度の普遍性があると期待される。そこで本年度は、O(N)対称性をもつ強結合・過占有スカラー場に対して、非平衡ダイナミクスの数値シミュレーションを行った。その結果、比較的低運動量の粒子集団は、系全体が熱平衡化する前の段階であっても、分布関数がBose-Einstein分布によってよく表されることから、有効的な温度と化学ポテンシャルを定義できることが分かった。この化学ポテンシャルは、正の値を取りつつ、まず準粒子の質量値に漸近し、その後0に向かって減少する様子が見られた。これは低い運動量の準位に多くの粒子を収容しようとするスカラーボソンの統計的力学的性質と整合する結果である。一方で、ゼロ運動量粒子の数は増加するものの発散することはなく、最終的には減少に転じることも明らかになった。これは、増加した低運動量粒子が結合して高運動量の粒子へと転換するような非弾性散乱過程が効き、BECの形成を阻害しているためと解釈できる。これらの成果をまとめた論文は、現在投稿準備中である。
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Research Progress Status |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(7 results)