2014 Fiscal Year Annual Research Report
多彩な数学的構造に基づく長期的安全性を保証可能な軽量公開鍵暗号の研究
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14J03467
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山川 高志 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 自己双線形写像 / 素因数分解 / 識別不可性難読化 / Fail-stop署名 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に素因数分解問題の困難性に関連した暗号方式に関する研究を行い、3件の国際会議発表を行った。 一つ目は素因数分解問題の困難性と難読化技術を組み合わせることにより自己双線形写像を構成したものである。自己双線形写像はある条件下では存在しないことが既存研究により示されていたが、本研究はその条件を回避することによって自己双線形写像を初めて構成したものである。これにより、より良い性質を持った多者間鍵共有や放送暗号を構成した。本研究は暗号理論分野のトップカンファレンスであるCRYPTOにおいて発表を行った。 二つ目は、既存の素因数分解問題の困難性に基づく選択暗号文攻撃(CCA)に対して安全な公開鍵暗号方式の安全性証明の不備を指摘し、それを補完したものである。本研究が不備を指摘した方式は、既存の素因数分解問題に基づくCCA安全な公開鍵暗号方式のうちで最も効率的なものである。したがってその安全性証明の不備を指摘したことの意義は大きい。本成果は国際会議SCNにおいて発表を行った。 三つ目は、素因数分解問題の困難性に基づくFail-stop署名に関するものである。Fail-stop署名とは、ディジタル署名の一種であるが、通常のディジタル署名は計算量的な安全性に依存しているため、時間の経過によって安全性が劣化するのに対して、Fail-stop署名では情報理論的安全性を用いているのでそのようなことが起こらず、長期的な利用に適している。既存研究で素因数分解問題に関連したFail-stop署名方式はいくつか知られていたが、それらには署名長が長いという問題点があった。本研究では、その点に着目し、既存方式よりも短い署名長を持つFail-stop署名方式を提案した。本成果は国際会議ProvSecで発表を行った。 以上のように、本年度はより高機能で長期的に安全な暗号方式についての研究を行い一定の成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は来年度以降の暗号方式の構成に向けて予備調査を行うことを主とする予定であったが、既に有用な知見がいくつか得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は主に素因数分解問題に基づく方式に関する研究を行ってきた。しかし、素因数分解問題は量子計算機が実現した場合容易に解かれることが知られているため、長期的な安全性に関して疑問もある。そこで、次年度以降は格子問題等の量子計算機を用いても解くのが難しいとされている問題に基づいた暗号について研究を進めていく予定である。
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Research Products
(7 results)