2014 Fiscal Year Annual Research Report
ワトソン-クリック塩基対形成を可能にする蛍光核酸のデザインとDNAプローブの開発
Project/Area Number |
14J03505
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 梓 日本大学, 工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ヌクレオシド / 蛍光性ヌクレオシド / プリン塩基 / オリゴデオキシヌクレオチド / DNAプローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、分子周辺の環境変化に伴って発光特性が変化するような新しい環境感応型蛍光核酸塩基のデザインおよびそれらの開発を行った。その中でも8-アザ-7-デアザアデニンに種々のナフチル基を導入した蛍光性核酸分子を含むオリゴヌクレオチド鎖は、完全相補鎖となる標的遺伝子と二重鎖を形成した際に、発光スペクトルの短波長シフトを示した。一方で、修飾塩基の対面塩基がミスマッチとなる不完全相補鎖とハイブリダイズした場合では発光波長シフトが観測されなかったことから、標的遺伝子の一塩基の違いを発光波長の違いにより識別できることに成功した。この内容はTetrahedron Lettersに掲載されている。このように分子周辺の粘度環境に応じて分子構造を変化させ、分子のねじれに応じた発光波長を示すという新しいコンセプトでDNA中の微細環境をモニタリングできることが示唆された。 さらに鋭意検討した結果、3-デアザアデニンにエチニルナフタレンを連結させた蛍光性3-デアザ-2'-デオキシアデノシン(3nzA)は優れた一塩基識別プローブとして利用できることを見出した。その修飾塩基の対面塩基がチミンの場合にのみワトソン-クリック型の塩基対を形成し、ナフタレン部位がDNA二重鎖のマイナーグルーブ側に突き出され、核酸塩基部位全体が平面構造をとることで、発光波長の長波長シフトを示した。従って、対面塩基のマッチ-ミスマッチの違いを発光波長(蛍光色)の違いで識別することに成功した。この成果はChemBioChemに報告している。本研究で開発した人工核酸塩基はDNA中で相手塩基と安定なワトソン-クリック塩基対が形成可能なことに加えて、二重蛍光特性を用いることで発光波長変化によって一塩基変異を識別できるプローブへの応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、新しい蛍光性核酸塩基を多数合成することに成功している。合成して得られた種々の核酸分子は蛍光スペクトル測定により、様々な溶媒中で発光変化が見られることを明らかにした。すわなち、核酸分子周辺の極性環境が異なると蛍光強度や発光波長が大きく変化する現象が示されたことから、本研究の第一の狙いとする環境感応型蛍光核酸塩基を合成することができたと言える(新規の蛍光核酸塩基を開発するには有機合成的に反応段階も多いため合成するのが非常に難しい)。さらに、それらの中でも、分子周辺の粘度環境(高粘度溶媒のグリセロールなど)に応じて分子構造を変化させ、分子のねじれに応じた発光波長を示す、いわゆる粘性環境変化に応じて発光モードも変化する核酸分子は特に優れた性能を示すことを見出している。これらの研究成果は既に査読有りの学術雑誌に報告している。以上のことから、本研究課題の達成度はおおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、極性や粘性などの環境変化に応じて発光特性が変化する人工蛍光核酸塩基を合成することに成功している。さらにDNA配列中の構造(特定の位置の塩基)の違いなどを発光波長の変化によって識別できるプローブとして利用できることが示唆された。 今年度は、平成26年度で得られた蛍光核酸塩基を用いて、実際に存在する一塩基変異(SNP)を持つ遺伝子配列を発光波長の違いによって容易に識別できるDNAプローブの応用を試みる。それと同時に、一年目と同様に核酸塩基に修飾する置換基(蛍光分子)の更なる検討や新しい蛍光核酸塩基のデザインや開発を並行して研究を進めていく。現時点では、粘性環境変化に応じて発光モードが切り替わる特性を示すことができれば、DNAプローブとしての性能が極めて高いことが明らかとなっている。しかしながら、どのような分子設計をすれば、いわゆる二重蛍光性を示す蛍光核酸塩基を開発できるのかいまだ解明できていない。従って、光物理化学的(分子軌道計算など)に追及し、置換基効果等を解明する必要がある。そのうえで、環境感応型蛍光核酸プローブとして最適な構造を有する機能性分子を決定または改良を施していく予定である。
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Research Products
(7 results)