2015 Fiscal Year Annual Research Report
固体-流体混合系における物質輸送及び構造形成に潜む普遍的機構の解明
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14J03528
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新屋 啓文 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 非線形動力学 / 粒子輸送 / 吹雪 / 粒子法 / 流体計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
吹雪や砂嵐に代表される粒子の空気輸送メカニズムを解明するため、これまでに流体計算と粉体計算を組み合わせた理論模型を構築した。本年度は、構築した理論モデルと先行研究の比較及びモデルの改良について、以下の通り実施した。 ①粒子輸送の発生と停止において、地表面摩擦速度は二種類の異なる臨界閾値(流体・衝突臨界)を示す。粒子輸送のヒステリシスは、これらの値の差により発生する。そこで、本モデルが風速変化に伴うヒステリシスを再現するか調べた。その結果、上空の摩擦速度が流体臨界(0.24m/s)より低い場合においても、粒子輸送は停止することなく維持された。さらに、衝突臨界(0.2075m/s)が粒子輸送速度から推定された。 ②1964年に提唱されたOwenの仮説「平衡状態の地表面摩擦速度は衝突臨界と一致する」が、近年の数値計算や風洞実験によって検証されている。しかし、その性質は先行研究間で矛盾しており、未だ統一的な見解に至っていない。そこで、数値模型の立場から地表面摩擦速度の性質を調べ、各先行研究と比較した。本モデルによる地表面摩擦速度は、弱風領域で衝突臨界と一致し、中風領域で風速増加に伴い減少し、強風領域で増加に転じる。これら結果は、風速領域の順にOwen仮説、既存の数値モデル、風洞実験と対応する。 ③スプラッシュ過程は、粒子の取り込みや跳躍粒子の挙動を特徴付ける上で重要である。しかし、実験でスプラッシュ過程を捉えることは困難であり、本モデルは弱風で得られた実験結果を採用している。強風領域における粒子挙動を記述するため、単一スプラッシュ実験に基づきモデルを改良した。その結果、粒子の運動は、粒径に応じて次の変化を示した。浮遊と跳躍の運動形態は30-60μmを境に切り替わり、跳躍による粒子高度は粗粒になるほど上昇する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、粒子の空気輸送のメカニズム解明に向け構築された理論モデルを用いて、理論や実験などの先行研究との緻密な比較検討を重ねた。そして、理論モデルの問題点を浮き彫りにしつつ、種々の改良が理論・実験的アプローチに基づき施された。 先行研究との比較結果として、地表面摩擦速度に関する先行研究間の矛盾は風速領域の違いによって生じたと示唆する、新しい展開を提示した。また、スプラッシュ過程の改良についても、粒径効果を反映した粒子-地表面の衝突過程が導入された。そして、跳躍・浮遊粒子が高い位置まで舞い上がらないという、本モデルの問題点を克服した。 今後、更なる厳密な検討が必要とされるが、既存研究との定量的な対応や粒子の空気輸送モデルの確立へ向けて、想定以上の結果が得られたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
地表面摩擦速度の風速依存性について、本モデルの結果は先行研究と定量的に対応した。しかし、粒子の取り込みは、風上から風下へ向かうにつれて風からスプラッシュへと切り替わる。風洞実験との詳細な比較を行う上で、流れ方向に関する粒子輸送の非一様構造は非常に重要と考えられる。そこで、本モデルの流体計算をLESに変え、粒子の取り込み位置からの距離に応じた輸送形態を調べる予定である。 また、スプラッシュ過程の改良によって、粒子挙動の風速への依存性は飛躍的に高まったが、単一粒子の衝突実験と空気輸送での粒子ダイナミクスの対応は不明瞭である。従って、先行研究との詳細な比較を行うとともに、既存アルゴリズムとの違いを明確にする予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG) 2015参加報告2015
Author(s)
松下 拓樹, 榎本 浩之, 西村 浩一, 東 久美子, 青木 輝夫, 紺屋 恵子, 新屋 啓文, 池田 慎二, 本田 明治, 永塚 尚子, ヌアスムグリ アリマス, 岩本 勉之
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Journal Title
雪氷
Volume: 77
Pages: 495-503
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