2015 Fiscal Year Annual Research Report
私立高等学校に対する経常費補助金の政策効果に関する実証的研究
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14J03532
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木村 康彦 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 私学助成 / 経常費補助金 / 私立学校助成審議会 / 学校法人等助成審議会 / 政策形成過程 / 行政需要 / 教育ガバナンス / 私立学校行政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果は、下記の通り大別して2つある。 第一に、埼玉県私立学校助成審議会を事例として、審議会が導入されるまでの政策形成と政策実施の様相を分析することにより、私立高等学校等に対する私学助成政策の政治過程を明らかとした。結論としては、本件事例は、私立学校アクターからの意見・要望を起点として、政治アクター(県議会議員)が中心となって政策を実現していた。政治アクターの積極的な参画は、一般行政アクター(知事部局)が主管する私学行政における政治過程の特徴とも考えられる。また、審議会の設置により、運営費補助金交付事務の一部が迅速化している。審議会の委員構成に課題点が残るものの、補助金配分決定までの政治過程について、一定程度の透明化が進んだことから迅速化が実現したものと考えられる。私立学校助成審議会の設置は、私立高等学校等経常費補助金を効果的に配分するための選択肢の1つだと言えよう。 第二に、アンケート調査を二次分析することで、私学振興助成に対する行政需要を明らかにすることを試みた。結論を述べると、私立学校に通う生徒の保護者は過半数が、私立学校の授業料を「個人で負担すべき」と考えている一方で、公立高校や国公立大学の授業料は「税金で負担すべき」と考える人が多い。一見すると、私立高校に通う生徒やその保護者は、私学に通うためにかかる費用などについて、受益者負担主義の考え方が浸透しているようにも思える。しかしながら、「経済的なゆとり」の有無でカイ二乗検定を行ったところ、経済的なゆとりがない家庭においては、「税金で負担すべき」とする人が統計的に有意に多く見られた。子どもを私立学校に通わせる家庭は比較的裕福であることが多いため、経済的なゆとりがない家計の状況が見逃されがちである。経済的なゆとりがない家庭の児童生徒等も、安心して私学に通えるように制度を整備していかなければならないだろうと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点における研究成果の公表が学会発表にとどまり、雑誌論文等への報告が遅れている一方で、資料収集は順調に進んでおり最終年度に向けての下準備ができた。また、2014年度から実施している国際比較研究についても、2015年度内の発表は間に合わなかったものの、2016年4月の香港比較教育学会で報告することとなっており、2016年1月時点で既に抄録は採択されている。来年度の本格的な研究成果報告に向けて、ある程度の見通しをつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究実績のうち、第一の私立学校助成審議会に関する研究成果については、昨年度に学会発表で得られたフィードバックを参考としつつ、引き続き資料収集と論文化に力を入れていく。また、第二のアンケート調査の二次分析については、私立学校に通う生徒・保護者だけでなく、公立学校に通う生徒・保護者のアンケート結果も含めて分析を進めていき、公私間比較を行う見込みである。最終年度を迎えるにあたり、2014年から実施している、研究成果全体の総括に取り組む。 この他に、高等学校に対する私学助成の特徴をより明確にするため、高等学校以外の学校種(大学等)も含めた私学行政制度全般についても、継続して調査を行う。とりわけ近年は、国家戦略特別区域法改正による公立国際教育学校等管理事業(公設民営学校)の制度化や学校法人が設置する私立学校を公立化させる動きなどが見られるが、こうした私立学校を取り巻く教育ガバナンスの変化にも注目していきたい。
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Research Products
(2 results)