2014 Fiscal Year Annual Research Report
有機触媒を用いたプロスタグランジン類の効率的全合成研究
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14J03546
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅宮 茂伸 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | Nef反応 / 反応機構解析 / ラジカル反応 / ワンポット反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
Nef反応はニトロ化合物を対応するカルボニル化合物に変換する有機合成上重要な反応である。しかし、通常Nef反応は強酸を用いる過酷な条件で反応を行うため官能基共存性に乏しく、より温和で高い化学選択性を有するNef反応の開発が望まれている。一方、申請者はプロスタグランジン合成の過程で、塩基性条件下進行するニトロアルケンのエノンへの変換反応を見出した。酸性条件下進行するNef反応に対し、塩基性条件下進行するNef反応はこれまでに殆ど知られていない。今回申請者は、以前の検討で見出した新規変換反応の詳細な反応機構解析を行った。検討の結果、申請者は同位体18酸素標識実験、ラジカルクロック実験、及び中間体の捕捉実験を行うことで、本反応が電子豊富なニトロナートから酸素への一電子移動と、続くジオキシラン中間体の生成、ニトロナートとジオキシランの分子間反応が進行することでカルボニル化合物が得られる反応機構を明らかとした。本反応は広い基質一般性を有しており、様々な置換基を有するニトロアルケン及びニトロアルカンを対応するエノン及びケトンに変換することができる。本反応は非常に温和な条件下進行し、酸性条件のNef反応には適用が困難な基質を用いても、高収率で目的物を得ることができる。また、申請者は原料であるニトロアルケンがアルデヒドから2段階で容易に合成できることに着目し、本反応を利用したアルデヒドからエノンのワンポット合成法を確立した。本手法を利用することで有機合成上重要なエノンが容易に合成できる。反応をワンポット化することで、順次試薬を追加するという簡便な操作で目的物が得られるだけでなく、精製に必要な溶媒と時間を大幅に低減することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにプロスタグランジン類の合成研究を行い、その過程で塩基性条件下進行するニトロアルケンのエノンへの変換反応を見出した。このような形式の反応はこれまでに知られておらず、その反応機構に興味が持たれる。今回、この新規変換反応のメカニズム解析を行った。種々検討を行った結果、ラジカルが関与する詳細な反応機構を明らかにし、さらに本反応が広い基質一般性を有していることを明らかとした。また本反応を利用した、有機合成上重要なエノンのワンポット合成を確立することにも成功した。現在は今回確立した手法を利用したプロスタグランジン誘導体の全合成研究に着手しており、既に標的化合物の形式的全合成を達成している。また、当研究室の不斉反応と今回開発した変換反応とを組み合わせた新たなキラルビルディングブロック合成法の開発も行っている。以上の成果から、研究進捗状況は順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今回開発した酸素を用いるNef反応を利用したプロスタグランジン誘導体であるベラプロスト及びラタノプロストの効率的な合成法の開発を検討する。ラタノプロストはファイザー社より販売されている緑内障治療薬であり、ベラプロストは東レが見出した肺高血圧治療薬である。どちらも優れた医薬品として知られているが、従来の合成法は多くの工程数を必要とするため、改良の余地が残されている。またベラプロストは合成上の問題からラセミ体として使用されているが、キラル体を合成できればより強い活性を持つ医薬品と成りうる。申請者は独自に開発したシクロペンタン構築法及びニトロアルケンのエノンヘの変換反応を駆使し、ワンポット反応を取り入れることで、これらの化合物の効率的不斉全合成を行う。
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Research Products
(5 results)