2014 Fiscal Year Annual Research Report
DPP4阻害薬の腎線維化抑制および慢性低酸素に対する影響に関する検討
Project/Area Number |
14J03553
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東島 佳毅 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 糸球体腎炎 / 糖尿病性腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規糖尿病治療薬として注目されているDPP-4阻害薬が糖尿病性腎症モデルにおいて血糖降下作用とは独立した機序で腎保護作用を示す可能性が報告されている。しかしながら非糖尿病性腎症モデルにおける報告はほとんんどない。以前は糸球体傷害が慢性腎臓病の進展に重要だと考えられてきたが、最近では尿細管間質の線維化、それに伴う間質の慢性低酸素が腎機能の低下とより強く関連することが明らかとなっている。そこで申請者はDPP-4阻害薬の腎線維化抑制効果や慢性低酸素に対する影響を調べる一環として、非糖尿病性腎炎モデル, ラットThy-1腎炎モデルを用いてDPP4阻害薬, alogliptinの腎保護効果について検討した。その結果、alogliptinはCD68陽性マクロファージの腎臓への浸潤を有意に抑制し、糸球体障害およびタンパク尿の改善傾向を示し、GLP-1受容体作動薬, exendin-4も同様にマクロファージ浸潤を有意に抑制した。興味深いことにこの時MCP-1およびRANTESなどのケモカイン遺伝子の発現に変化は認められなかった。さらに腹腔マクロファージを用いたex vivo細胞走化試験においてexendin-4がMCP-1誘導性マクロファージ浸潤を用量依存性に抑制し、この効果はalogliptinでは認められなかった。以上よりラットThy-1腎炎モデルにおいてDPP-4阻害薬はGLP-1依存性にマクロファージ浸潤を抑制することで、腎保護作用を示す可能性が示唆された。この研究成果はAmerican journal of Physiolosy Renal Physiologyに1月に採択された(Higashijima Y : Am J Physiol Renal Physiol. 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はDPP-4阻害薬の腎線維化抑制効果や慢性低酸素に対する影響を調べるために非糖尿病性腎症モデルを用いて解析を行った。その結果大変興味深いことにDPP-4阻害薬がタンパク尿の改善とは独立した機序で直接的にマクロファージ浸潤を抑制することを明らかにした。その研究成果についてアメリカ腎学会、日本薬理学会に報告し、さらに1月には腎臓分野における一流雑誌であるAmerican journal of Physiolosy Renal Physiologyに採択された。また、昨年10月にはトラベルグラントとして加藤記念国際交流助成に採択、今年3月には京都で開催された生命動態合同シンポジウムにおいて数学協働プログラムポスター賞を受賞した。このようにDPP-4阻害薬の腎保護効果についてすでに学会および論文発表することができており、研究は順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、DPP-4阻害薬がマクロファージ浸潤抑制を介して腎線維化および腎低酸素を改善するかどうかについて2つの腎線維化モデル, 片側尿管結紮モデルおよびラット片腎摘Thy-1腎炎モデルを用いて検討しているところである。さらにDPP-4阻害薬の慢性低酸素に対する影響を調べるために腎特異的-低酸素応答性に分泌型ルシフェラーゼを発現するマウスの作成を試みている。最初のトライとしてin vitroの実験系で低酸素応答性に分泌型ルシフェラーゼを発現するコンストラクトを作成し、低酸素に応答してルシフェラーゼタンパク質が分泌されることをレポーターアッセイにて確認したところである。
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Research Products
(8 results)