2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J03607
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小西 邦彦 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 公的部門の研究開発 / 動学的一般均衡 / 経済成長 / 厚生分析 / 均衡の不決定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学や公的部門における研究開発行動をモデルに組み込み、政府による研究開発の支援政策が及ぼす効果を分析するという目的の下、以下の研究を行った。
1.論文タイトル“Public Research Spending in an Endogenous Growth Model”では、公的部門の研究者が存在し、その数が多くなると民間部門の研究開発の生産性を上昇させるというモデルを構築し分析を行った。得られた主な結果として、(1)政府の財源が資産所得税に依存するときに経済の均衡が一意に決定することができないという均衡の不決定性が発生し得ることを示した。(2)家計の厚生に関して、厚生を最大にする政府の研究開発支出の水準は定常状態の成長率を最大にする水準よりも低くなることを示した。
2.上記のモデルでは、公的部門の研究者の増加が直ちに民間部門の研究開発の生産性を高めるという仮定を課していた。より現実的な仮定として、公的部門の研究者は基礎研究を行い、その結果として民間部門の研究開発の生産性を上昇させるというモデルにおいて分析を行った。この設定の下では、基礎研究を行う研究者の数を上昇させたとしても、民間部門の研究開発に影響を与えるまでに時間が掛かり、政府の政策によって経済厚生に与える影響はより複雑なものになるが以下の結果を得ている。(1)上記のモデルは移行過程があるが、最初に経済が定常状態に居続けるときの厚生の分析を行った。その結果、この厚生を最大にする基礎研究の水準は成長率を最大にする水準よりも低くなる。(2)次に、初期に経済が定常状態に居て, 政府が基礎研究への支出を変化させると新しい定常状態へと移行するので、このときの厚生分析を行った。(1)の経済が定常状態に居続けるときの厚生を最大にする基礎研究の水準であるとすると、基礎研究の水準を低下させることによって厚生を上昇させることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように公的部門の研究開発への政府の支援政策が及ぼす効果を分析するという本研究の目的に関して、いくつかの政策的含意を明らかにすることに成功したという意味でおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、当初の研究計画の通り、規模効果のないモデルにおいて政策の頑健性を調べる。(規模効果とは経済の人口規模が拡大すると成長が促進されるという性質で実証的に支持されていないものである。) さらに、政府の研究開発への支援政策と公共投資との関係について分析を行う予定である。
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Research Products
(3 results)