2014 Fiscal Year Annual Research Report
自治体文化芸術政策の実態を踏まえたモデリングに関する総合的研究
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14J03611
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
竹内 潔 政策研究大学院大学, 政策研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 文化政策 / 地方自治体 / 芸術文化政策 / 地域政策 / 芸術祭 / 地域活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、全国の自治体が現に展開している文化芸術政策について、他の政策分野との関連性に留意しつつ総合的に把握し、規範論に終始することなく、各自治体が現実的にとりうる政策モデルを得ることを目的としている。 今年度は、次年度以降に実施予定の全国調査の準備段階として、都道府県、政令市指定都市といった比較的規模の大きい自治体から順に研究に着手し、その他一般市町村他の多くの自治体にも共通する課題の抽出に努めた。なお、当初計画していた予備的なアンケート調査は実施せず、現地調査及び文献調査による事例研究を深めることに注力した。 従来の自治体文化芸術政策は、文化施設の建設とその後の運営の予算の大部分を占めていた。依然としてその傾向は続いているが、改めて近年の動向を追ってみると、「芸術祭」に比較的多額の予算を投じる自治体が増加している。これらの事例を詳しく見ると、主に地域活性化の観点から大規模な国際芸術祭等に対する期待が広がる一方で、従来から多くの自治体で実施されている地方芸術祭との関連は、ほとんど論じられていないことが分かってきた。文化芸術政策としての評価を適切に行うためには、「芸術祭」の在り方を再定義する必要がある。 これらの研究の経過については、地域政策の観点から日本地域政策学会において発表するとともに、芸術文化政策の観点から日本音楽芸術マネジメント学会において発表を行った。また、日本における自治体文化芸術政策の動向の紹介という観点から、国際学会での発表も行った。また、事例研究の一環で茨城県における文化振興条例検討の協力員として参画し、その経験等をもとに執筆した「都道府県と条例」の文章が、環境分野の都道府県条例についてまとめた書籍に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、自治体文化芸術政策の実態に即し、今後の政策の進展にとって有効で現実的な政策モデルを得ることを最終目的としている。今年度は、その準備段階として、広範にわたる自治体文化芸術政策のうち、多くの自治体にとって共通する課題となる主要なテーマは何かを抽出することが目標であった。 そのため、都道府県及び政令指定都市を皮切りに、各自治体の文化芸術政策に関する条例、計画、予算、事務事業等を総合的に調査し、いくつかの自治体については、現地調査により詳細を調べていった。すると、近年、大規模な国際芸術祭等に地域活性化の効果を期待して比較的多額の予算を投じる自治体が増えている一方で、それらの新たな芸術祭と従来から多くの自治体で実施されている地方芸術祭との関連があまり論じられていないことが分かってきた。 結果として、当初計画していた予備的アンケート調査は実施しなかったものの、代わりに注力した文献調査及び現地調査による事例研究により、上述の「芸術祭」の政策的位置づけの検討が、自治体文化芸術政策全体の性格とも関連し、重要なテーマであるとの認識に至った。 また、本研究は、地域政策と芸術文化政策という2つの側面を持つことから、それぞれ日本地域政策学会、日本音楽芸術マネジメント学会という関連学会において報告する機会を得て、研究テーマへの考察を深めることができている。また、国際学会での発表も行っており、国内的な議論にとどまらず、国際的な視点で研究を見直す機会も得ている。 以上のとおり、一部研究計画に変更点があったものの、次年度以降に実施予定の本格的な全国調査に向け、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は、自治体文化芸術政策の実態に即し、今後の政策の進展にとって有効で現実的な政策モデルを得ることである。これまでの研究を踏まえ、今後の研究では、さしあたり、自治体文化芸術政策のうち「芸術祭」に焦点を当て、自治体が実施すべき「芸術祭」のモデルを探求する。 「芸術祭」には、従来型の地方芸術祭のほか、新たに広がりを見せている国際芸術祭などいくつかのタイプが存在する。さらに、特に後者の国際芸術祭では、地域活性化への期待が大きく、従来の地方芸術祭とは政策の目的とする方向が異なっているものと考えられるが、一般化できるかどうかは定かではない。 そこで、全国の自治体を対象に調査票を送付し、各自治体が実施している「芸術祭」のおかれている現状を尋ねるとともに、複数の「芸術祭」のタイプを示しながら、各自治体がどのような「芸術祭」を志向しているかや、直面している課題などについても尋ねる。そして、これらの回答をもとに、今後、「芸術祭」が現実にどのような展開を見せる可能性があるかを分析しつつ、文化芸術政策の観点から、モデルとなる「芸術祭」を考察する。 なお、調査対象となる自治体は、都道府県、政令指定都市、中核市、一般市町村といった団体区分別に状況が異なること、新たなタイプの国際芸術祭等をすでに実施している自治体における検討状況が分析の鍵となることから、調査票作成前に十分な調査を行い、調査票集計後にも追加のヒアリング調査等を行って、理論の精緻化を図る。 最後に、「芸術祭」を文化芸術政策の特性を代表するものととらえ、他の施策や文化芸術政策一般のモデルについても考察を行う。
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Research Products
(5 results)