2014 Fiscal Year Annual Research Report
観測と化学反応シミュレーションによる星間空間のグリシンとその前駆体の研究
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14J03618
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
鈴木 大輝 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | アストロバイオロジー / 星間分子 / 化学進化 / グリシン前駆体 |
Outline of Annual Research Achievements |
星間空間でもっとも簡単なアミノ酸であるグリシンが形成される経路は実験的・理論的に提案されている。そのうちの1つとして星間空間の塵表面でHCNに水素が付加し、メチレンイミン(CH2NH)、メチルアミン(CH3NH2)を経て、CH3NH2とCO2が反応してグリシンが作られるという道筋がある。しかし、これらグリシン前駆体の化学進化は実際の星間空間でははほとんど理解されていない。グリシンの化学進化を理解するためには星間空間での前駆体の観測から化学進化を明らかにすることが不可欠である。 そこで今年度は当初計画していたようにグリシン前駆体の探査とその解析を進めた。電波望遠鏡を用いてグリシンの前駆体と考えられるメチレンイミンの探査を行い、8天体で検出することに成功した。観測によって得られたデータからメチレンイミンや同時に検出された分子の存在量を導出したところ、Orion KL, G10.47+0.03, G31.41+0.03では他の天体よりもメチレンイミンが1桁近く多いことが分かった。これらの天体では水素の再結合線が弱いといった性質があるので、星形成の初期段階に相当する紫外線が弱い段階でメチレンイミンが豊富に存在しているのではないかという仮説を立てた。メチレンイミンはグリシンの前駆体と考えられるので、メチレンイミンが豊富な天体ではグリシンや他の前駆体も豊富と考えられる。従って、この仮説を検証することで将来的に星間空間でのアミノ酸やその前駆体探査を計画する手がかりが得られると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリシン前駆体の観測から星間空間での存在量を見積もり、メチレンイミンが豊富な天体とそうでない天体の物理的環境についての考察を行うことができた。今年度に得られたこれらの結果は、来年度以降に着手する化学反応ネットワークシミュレーションの研究によってグリシンに至る化学進化を解明するための手がかりとすることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は化学反応ネットワークシミュレーションによりグリシンに至る化学進化のモデルを構築していく。今年度の研究により得られた複数天体でのメチレンイミンおよび、メタノール等のほかに同時に観測された有機分子の存在量を正しく再現するモデルを構築することで、グリシンや他の前駆体の存在量についても信頼できる予測存在量が得られる。また、これまで実験的・理論的に提案されてきた化学反応を取り入れることでグリシン前駆体の主要な形成経路経路が明らかになると期待できる。 また、今年度立てた紫外線が弱い段階でメチレンイミンが豊富であるという仮説は、中心星の温度から得られる紫外線の強度や中心星からの距離、ダストによる減光等を考慮てシミュレーションに取り入れることで、紫外線により現実的なタイムスケールで分子が破壊されるのかを定量的に検証する。
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Research Products
(6 results)