2014 Fiscal Year Annual Research Report
財・サービス貿易のグローバル化とスキル別労働の失業率・賃金格差の関係について
Project/Area Number |
14J03675
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
矢根 遥佳 大阪大学, 国際公共政策研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 国際貿易 / 労働 / 輸入競争力 / 輸出競争力 / 企業レベル / 世界産業連関表データベース / グローバル化 / スキル構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,グローバル化の進展による国際貿易の形態の変化を踏まえて、国際貿易を進めることが各国の労働市場にどういった影響を与えるのか, そしてどのような政策を立てれば貿易から得られる便益(被る費用)を最大(最小)化することができるのかを, 最新のデータを用いて明らかにすることを目的とするものである.採用1年目においては,当初の計画通り,近年増加している理論的研究の動向を踏まえ, 他国の輸出競争力がベトナムの企業の雇用に与える影響についての計量経済分析を行った. この研究に関する論文を執筆し,タイ・バンコクで行われた国際学会にて論文発表を行った.現在は発表でのコメントを踏まえてほぼ完成稿に仕上がっており,査読付きの国際ジャーナルに投稿準備中である. 次に,これまで貿易データの制約により実証分析を用いた研究の蓄積が著しく不足していた,付加価値貿易とスキル別労働に関する研究にも取り組んだ.その成果は,国際貿易がスキル別労働に与える影響を産業別に計量経済分析を用いて分析した論文 “Offshoring and Skill Composition of the Labor Market”として現在執筆中である.この分析は,豊富なデータの集中するEUが率いて構築した世界産業連関表データベース(The World Input-Output Database)をもとに, 新たな拡張データベースを作成することによって可能となったものである.ここでは,これまで収集した産業別国際貿易のデータとスキル別労働データを組み合わせ, 産業間の違いを考慮した上で, 国際貿易が各国・各産業の雇用・賃金に与える影響を,計量経済分析を用いて計測した.これにより, 国際貿易や企業の生産過程の拠点分散化(フラグメンテーション)と労働のスキル構造との関係を明確にすることができると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年増加している理論的研究の動向を踏まえ, 企業レベルのデータを用いて,中国など他国の輸出競争力がベトナム企業の雇用に与える影響を推計した.この結果はバンコクで開催された東アジア経済学会で発表し,論文を査読付きジャーナルに投稿予定である.主な分析の結果として以下の3点が得られた.(1)労働集約的な国家同士である中国とベトナムの間の貿易が増加し,中国からの輸入が増加した場合,ベトナムの企業は産業を変えることにより,倒産を防ぐが,雇用は減少する.(2)中国を除いた他の低所得国の輸出競争力の強化は,生産性の低い企業を退出させ,生き残った企業の雇用を増加させる.(3)高所得国からの輸入品は高品質である傾向が強いため,競争することができず,ベトナム企業の雇用は減少する. また,国際貿易がスキルレベル別労働者に与える影響を産業別に分析する研究に取り組んでおり,グローバル・バリューチェーン(GVC)と労働のスキル構造との関係が明らかにされることが期待される.さらに,シンガポールで行われた応用一般均衡モデリングの集中コースを受講し,採用2年目にモデルの構築を行う準備を進めた.
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Strategy for Future Research Activity |
貿易は必然的に多国間かつ通時的な側面を有するため, 各国の経済発展における経路依存効果や, その効果が多国間に及ぼす相互作用の分析にも研究を発展させる必要がある.そこで、次年度においては応用一般均衡モデルを用いた模擬実験(シミュレーション)による分析を行うことを考えている.その準備段階として,2015年1月26日から30日まで5日間,シンガポールにて行われた短期集中コース「EcoMod Modeling School」を受講し,コンピュータ・ソフトウェアGAMSを用いて計算可能な一般均衡(CGE)モデルで模擬実験を実施するためのデータ整理・モデル構築を行う準備を整えた.これを踏まえて,採用2年目からは分析手法を計量経済学の手法からCGEモデルへ拡張し,模擬実験を行っていく計画である.模擬実験を実施することにより,計量経済分析ではなしえない成果を得ることができ,より頑健な政策提言を行うことができる.このように,計量経済分析と動学的CGE分析の2つの手法を用いることにより各手法の持つ長所を生かすことができる.具体的には,環太平洋連携協定(TPP)への加入といったグローバル化がもたらすとされている,スキル別労働者に与える失業率や賃金格差の原因を追究し,動学モデルを用いてその効果を予測する,といった作業に取り組んでいく.
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