2014 Fiscal Year Annual Research Report
非希少遷移金属触媒を用いる炭素-水素結合変換反応の開発
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14J03693
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
相原 佳典 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 炭素ー水素結合 / ニッケル触媒 / 二座配向基 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機合成化学において、炭素-水素結合の直接的変換反応は工程数や廃棄物削減の観点から、従来のクロスカップリング反応に代わる手法として注目されている。しかし、炭素-水素結合の官能基化ではパラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの希少な遷移金属が多く用いられてきた。そこで私は、より入手しやすいニッケル触媒を用いた反応の開発に着手した。 最近、ニッケルを用いた炭素-水素結合の変換反応は、盛んに研究されているがアゾールやパーフルオロベンゼンなど酸性度が高い炭素-水素結合に限られていた。私は、ニッケルでは配向基との親和性が低いため、ベンゼン環やアルカンなどの不活性な炭素-水素結合の反応へ展開が困難であると考えた。 有機化合物中に数多く存在する炭素-水素結合を位置選択的に官能基化する手法の一つとし、配向基を利用する方法が広く用いられている。この手法では、安定なメタラサイクルが形成されることが不活性な炭素-水素結合を切断する駆動力となっている。そこで私は、この手法を拡張し、分子内に2つの配位できる原子をもつ二座配向基の利用を着想した。二座配向基を用いることで3点により配位した、より安定なメタラサイクルが形成されるので、ニッケルを用いた場合でも、炭素-水素結合の切断のための十分な駆動力を得られると考えた。 上記に示した考えのもと、ニッケル触媒を用いた炭素-水素結合の変換反応の開発を行い、8-アミノキノリン由来の二座配向基を用いることでニッケル触媒でも不活性な炭素-水素結合の切断が起こり、ハロゲン化アルキルを用いた炭素-水素結合のアルキル化が進行することを見出している。 得られた結果をもとに、種々の反応剤を用いた反応への展開を試みたところ、5つの反応を見出した。中でもこの手法は、より不活性なsp3炭素-水素結合の変換反応にも適応できることが分かった。(式1、J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 898.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年間のという短い期間でありながら、4つの科学ジャーナルに研究成果を掲載することができた。また、それに続く新しい反応開発にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
<sp3炭素-水素結合の新規変換法の確立> 予備的な実験結果から進行することが分かっているニッケル触媒を用いたsp3炭素-水素結合のフェニル化についての更なる収率の向上を目指す。次に、配向基の検討を行い最適な配向基の検討を行う。さらに、基質の適応範囲についての検討を行い、3置換のもの以外にも2置換のカルボン酸誘導体や Me基以外のsp3炭素-水素結合で反応が進行するかを検討する。機構研究についても行い、同位体効果の測定、競争実、反応中間体の観測や単離などをおこない反応機構についての情報を得る。様々なsp3炭素-水素結合官能基化反応の開発を行う。報告例が少なく、生成物が医薬品中間体合成に有用なフッ素化やトリフルオロメチル化などを優先に行う。具体的には求電子的なフッ素化試薬やトリフルオロメチル試薬を求電子剤に用いた反応を行う予定である。 <触媒的量の配向基を用いた反応の開発> 最初に、アルコールとホスファイトのエステル交換が起こった後の基質を別途合成しその基質を用いて、炭素-水素結合変換反応の開発を行う。 次に、アルコールと触媒量の遷移金属錯体・配向基の条件下、種々の添加剤などの効果を検討し最適条件を決定する。
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Research Products
(6 results)