2014 Fiscal Year Annual Research Report
天然資源の希少性が技術進歩と経済成長、経済厚生に与える影響について
Project/Area Number |
14J03695
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大浦 あすか 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 環境汚染 / 経済成長 / 汚染軽減 |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な経済成長と環境保護の両立に関する研究:Oura, Asuka, Yasukatsu Moridera and Koichi Futagami. "The long run effect of an upper bound of pollution." 戦後の高度経済成長の代償として発生した公害問題や、近年の中国やインドの急速な工業化により発生したPM2.5問題などのように、生産活動により排出される大気汚染物質は、深刻な健康被害を引き起こす。このように、活発な生産活動は時には経済厚生を悪化させることになるので、汚染の悪影響は経済政策を考える上で無視できない要因となっている。 本研究では、生産活動により排出された汚染が経済厚生に悪影響を与えることを考慮し、経済厚生を最大にする資源配分について分析することを目的とする。モデルの特徴として、①汚染水準の上限(汚染がこの水準を超えると生存できなくなるという生物学的な閾値)を課すことで、汚染が無限に蓄積するような経路を排除していること、②汚染削減活動を考慮する際、排出した汚染を削減する(もしくは排出しないようにする)技術水準に応じて異なる経路が存在することが挙げられる。 分析の結果、以下の2点を示せた。①汚染軽減技術が十分に効率的ではないとき、環境制約のせいで経済活動が制限され長期的には経済水準が一定で留まってしまう。そこでの環境汚染の水準はプラスで一定である。②汚染軽減技術が十分に効率的なとき、経済成長が持続可能であり、汚染も低い水準を保ち続けることができる。持続可能な経済成長を議論する上で大きな制約となってくるにもかかわらず見過ごされてきた汚染の上限を考慮したのは、本研究が初めてである。また、最終的に行き着く長期的な経済の状態だけではなく、そこにたどりつくまでの移行過程の性質を解析的に調べることができた点も貢献である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「汚染の上限」という新しい効果を導入することで解析的な分析が複雑になったが、変数をうまく定義し直すことで分析を終えることができた。また国内セミナーで報告することで、意見やアドバイスをいただくことができ、さらに研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を国際学会でも報告し、多くの意見やアドバイスをいただき洗練させる。さらに、本研究と関連して、環境汚染と経済成長の関係を、健康被害を通した効果を通じて分析する研究を進める。
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Research Products
(4 results)