2014 Fiscal Year Annual Research Report
P2X4受容体の立体構造を基盤とした「疼痛」抑制分子の探索と抑制機構の解明
Project/Area Number |
14J03712
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井川 達弘 九州大学, 薬学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | P2X4受容体 / 疼痛 / 抗体 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では慢性疼痛である「神経障害性疼痛」の発症原因因子として考えられているP2X4受容体の立体構造を基盤とした「疼痛」抑制分子の探索および構造解析による抑制機構の解明を目的として実験を行った。実験にあたって疎水性アミノ酸に富んだ膜貫通領域を含むP2X4受容体全長では水溶液中での取扱が困難なので、膜貫通領域を除いた細胞外ドメインおよびその一部であるヘッドドメインを標的として機能的抗体や阻害剤の開発を行い、全長発現細胞を用いて評価を行っていくこととした。平成26年度ではラット由来P2X4受容体ヘッドドメインをキャリアタンパク質としてスカシ貝由来ヘモシアニンに化学修飾を行い、自己免疫疾患モデルマウスに免疫することでヘッドドメインを認識可能な38種類の抗体の作製に成功した。蛍光ゲルろ過によりGFPをC末端に融合させたラット由来P2X4受容体全長に結合する抗体をスクリーニングしたところ5種類の抗体を獲得できた。本抗体はいずれも細胞に発現させたラット由来P2X4受容体の検出にも利用可能でイメージングに有効な機能的抗体であった。そこで表面プラズモン共鳴法を用いてこれらの抗体の結合力の算出や抗原認識に関わる抗体Fab領域の配列解読など詳細な特徴付けを行った。また大腸菌を用いて配列を解読したFab領域の発現系の構築と機能的な構造を持たせるリフォールディング系の構築を行い、細胞で発現させた抗体と同等の機能を有するFab領域の獲得に成功した。これまでP2X4受容体には機能的な抗体が存在しなかったため、本研究成果はP2X4受容体の抗体開発に関する研究においてマイルストーンである。本研究成果を応用することでヒト由来P2X4受容体抗体や他のP2Xファミリーに対する抗体の作製も可能であると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当時P2X4受容体に対する抗体は細胞内ドメインを認識する特異性の低い抗体しか存在せず生細胞を用いたイメージングには利用できなかった。しかし本研究成果により生細胞でもイメージングに利用可能な抗体が作製できた。平成26年度では機能的な抗体作製を目標としていたため現在の進捗状況はおおむね順調だといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までにラット由来P2X4受容体のヘッドドメインを用いた抗体作製により細胞に発現したrP2X4受容体をイメージング可能な抗体を獲得することに成功した。そこで今後は(1)本抗体のキャラクタリゼーション、(2)本抗体とラット由来P2X4受容体ヘッドドメインの複合体構造解析および(3)ヒト由来P2X4受容体認識抗体作製を行っていく。 (1)についてはP2X4受容体が本来発現しているミクログリア細胞での局在化を可視化するために実験系の改善を行っていく。さらに実験系を確立できたら抗体Fab領域とP2X4受容体を阻害する低分子化合物とを修飾させて新たな阻害分子の創製を試みる。 (2)についてはラット由来P2X4受容体ヘッドドメインと抗体Fab領域との複合体構造解析を行うことで結合に関わるアミノ酸残基を明らかにして結合力を強めた抗体Fab領域を作製していく。 (3)についてはラット由来P2X4受容体認識抗体を作製した技術を応用して、いまだに機能的な抗体が存在しないヒト由来P2X4受容体認識抗体を作製していく。しかし抗原とする予定のヒト由来P2X4受容体ヘッドドメインは安定に調製することが現状困難なので、遺伝子組み換えにより安定化あるいはラット由来P2X4受容体ヘッドドメインのヒト型化を行い安定な抗原調製をまず行っていく。
|
Research Products
(1 results)